感情労働としくじり

しくじった
心臓が高鳴り 目眩(めまい)した
震えが止まらなかった
取り返しのつかない 後の祭りだった

しくじった
相手の意向を 聞き入れられなかった
わがままし放題で 意固地に言い張った
だから 堪え切れずに言い放った
誰が勝手な言い分 聞いてくれるの
誰にお世話されてると 思っているの
誰のお陰で 暮らしていけるの

しくじった
上手くなだめようとしただけなのに
いらぬことを 口走った
我慢してきたのにと思った瞬間 切れた
よかれと思ってしてきたことだった
善意が仇になって 信用もなくなってしまった

しくじる
関係修復は 難しい
誤解ですと 逃げる一手も使えない
感情の支配下では しばらく冷却期間を置くしかない
相手に非があったとしても 言ってはいけない言葉を吐いた
自分に非があるのは してあげてるというおもいの強さ
自分の非力さが 表に出てしまったことのあてつけか
 
しくじり
相手の挙動が 腑に落ちないことばかりでも
見下すような言葉を吐くのは 卑しい品格
包容力と寛容力が求められる この仕事
感情労働だからこそ 覚めた頭で対応しなければならない
謝罪をしなければ お互い気詰まりになる
受け入れてもらえるかどうかの不安もある
それがしくじりで負ってしまった自己責任

仕事を続けるには 
しくじりを覚悟して 臨むしかない
しくじりを糧にするしか 立ち直れない

〔2020年12月8日書き下ろし。感情労働をしている方の我慢を強いられる仕事の厳しさを、しくじりで想像した〕