何と穏やかなのでしょう

世界も日本も コロナの感染力はいまだ衰えを知らない
1年以上も前 コロナは瞬く間に世界中に広がった

コロナは 多くの人を悲しみの淵に追いやった
コロナが 老人施設で流行り 利用者も職員もあらがいきれなかった
未知なる脅威は恐怖に変わり 不安との葛藤が心を乱す
ただ ここで退(しりぞ)き 怖じ気づくことはできなかった
穏やかな日々の暮らしを 護ることこそ本分だった
だから コロナを老人ホームに 決して持ち込まぬよう
コロナとの 厳しい闘いはいまも続いている   

職員の献身的な介護は 緊張を決して緩めることはない
職場でも家庭でも予防を怠りなく 家族とともに続けている
友と外で飲むことも歌うことも自粛して ストレスを溜める
家族と外で遊ぶことも食べることも自重して 家に籠もる  

1年以上も自らを律して 利用者の命と暮らしを護ることに徹する 
厳しすぎるくらいの自己管理に身を慣らし 平常心を保つ
リスクゼロに挑むことが いまでは当たり前の日常となった
マスクも手洗いも消毒も 日常の習慣となっていた
マスク越しの笑顔と明るい会話が 穏やかな暮らしを支えた 
そして 誰一人として 感染者は出ていない

成果は感染を予防するワクチンが 優先的に接種されることで報われた
コロナの感染を抑えるワクチン接種は
利用者を護るため ストレスとの戦いともなった窮状を救う
このタイミングのワクチン接種で 一息つける安堵感が嬉しい
ただ 世間の目が注がれる以上 油断は決して許されない
緊張の糸を緩めることなく 当たり前となった日常に戻る  

うつさぬよう うつらぬよう 
日々防疫への備えと心構え 一人ひとりの暮らし方にいたるまで
全て利用者への介護に 身を粉にしている姿がまぶしい
ケアに誠心誠意尽くす姿こそ 福祉社会の実現である
ケアの現場を護り高める意識こそ 福祉教育の実践である 
賢明にケアする人たちこそ 世の希望である

そう信じてやまない 多くの人の理解と支えの中で
今日も逞しく介護の現場で
終の住処に生きるお年寄りと共に
穏やかな暮らしをつくる ケアのプロとして精魂を尽くす

「何と穏やかなのでしょう」
それが最高の褒め言葉となる

〔2021年4月13日書き下ろし。ワクチン接種後の老人福祉施設の職員に宛て、1年間のご苦労に感謝したい〕