18年間の教師生活で出会った
二人の教え子に再会した
洞爺湖畔の小さな僻地の小学校
教職の最初に担任した5年生4人
もう58歳になっていた
胆振東部地震で被災した早来の小学校
教職の最後に担任した6年生46人
もう43歳になっていた
58歳は 民間会社で研修担当の管理職に異動していた
二年半ぶりの再会だった
研修プログラムの改革のポイントや
講義の組み立てや展開の仕方のノウハウ
部下の指導や育成についてのアドバイス
抱える問題に悩みながらも
改革への熱意とモチベーションは 本物だった
異業種の仕事の苦労は知らなくとも
そのおもいを受けとめることの喜びは
何ものにも代えがたいと知らされた
43歳は 自営業だった
卒業以来31年ぶりに再会した
担任当時 湾岸戦争が勃発した
ヨルダンで避難民の救援にあたる日赤医療団に
助けてあげてほしいと みんなで手紙を送った
「ぼくらの未来が小さくなった」
戦争の大過を感性鋭く批判した言葉に 衝撃を受けた
彼の豊かな創造力と卓越した表現力に 感嘆しつつも
教師を辞める決意と 社会教育へ歩む覚悟が揺らいだ
競輪選手だった
結婚後伴侶は難病を発症したが 子を授かった
愛おしく夫婦付随で 子育てした
4年後病状が悪化した
引退して 妻の看病に専念した
人工呼吸器を最期まで拒否した妻を 看取った
胸が張り裂けるこの愛は切なすぎる 真実の愛だった
妻似の可愛い息子は小学3年生 二人で暮らす
今日と明日の話題になった
妻のことが契機になって 健康づくりに動いた
競輪でのトレーニングを生かせないか
理学療法士の資格を取るために 3年間専門学校に通った
3月 治療院を開いた
子どもの健康づくりにも関心があった
運動の苦手な子であっても
身体を動かす楽しさを知って欲しいと 教室を開いた
数人の子と土の上で ストレッチから縄跳び ランニングをする
コロナでストレスを溜めている 子どもらの心と身体の健康を
思いっきり走り跳んで心呼吸して 自然の中で取り戻したい
地球の健康が治癒力を高めて 命あるもの全てを生き生きさせる
そんなおもいの中で 彼の夢が語られてゆく
純朴さと真っ直ぐな生き方は 強さと優しさを身に纏う
メールがきた
「先生とお話しできて、自分の方向性が見えてきたように思いました。先生に教えてもらった事、自分が経験したことを今の子どもたちに伝えたい気持ちが強くなりました。コロナ禍で人と人との繋がりが希薄になり、どうにか打開策をと、考えております。今後わからなくなったときには、ご連絡させていただきます。先生のお力貸してください」
社会教育に目覚めた彼の力になりたいと ただただ嬉して仕方なかった
それぞれの人生で たった2年という時間でしかない
そこに豊饒の時が流れていたことを 実感した
一期一会の出会いが 級友らと共にショートさせる共育の場があった
「生きる」というエネルギーを 発散し影響し合ったと確信がいった
再会は「生きていく」という明日へのエネルギーを充填する場となった
二人の悩みや希望が 明日への生きるエネルギーとなることを祈った
教え子とは なんと不思議な存在なのか
教え子には なんのてらいもなく素の自分をさらけ出す
教え子の言葉は 素直に心に響く
教え子との再会は 別れの時間を超越していまを語る
教え子に この年齢で出逢えることこそ奇跡かもしれない
教え子に たくさんの失敗をおかしたことにいまも悔いを残す
教え子は 私の生きた証であり人生のたからものだ
教え子との絆の結び直しに 人生の最良の刻を迎える
教え子たちよ
未熟で不勉強な教師であり 不寛容な人間だったことを
心から深くお詫びしたい
教え子たちよ
いつも支え助けてくれ 人間教師として育ててくれたことに
心より厚く感謝したい
教え子たちよ
君たちの真剣なまなざしが 明日の道を希望で照らすことに
心から熱く応援したい
私の教え子たちよ
君たちとの一期一会の出会いに 人生の価値を見出したことに
心の底からの有難うを伝えよう
〔2021年7月10日書き下ろし。小学校時代は心の性根を育てる一方、人間教師の性根を鍛えてくれる。それが教え子たちの共育力である〕