今日、学校の「総合的な学習の時間」等で、子どもたちが「福祉」について学ぶ機会は増え、地域では高齢者とのふれあい活動などのボランティアとして、児童・生徒が民生委員・児童委員と交流する場面も多くなってきています。
一方で、地域社会の結びつきが希薄化し「市民(地域住民)」のあり方が問われる中で、著者は「地域を基盤とした福祉教育実践の歴史から学ぶことが肝要である」と、福祉教育実践の源流のひとつ、1946年に徳島県で創案された「子供民生委員」の活動のおこりから、福祉教育の展開(理念と構造)について探っています。そこには創始者の精神を受け継ぎ、福祉教育の発展に貢献された木谷宜弘氏をはじめ関係者の熱意により、全国で実践が積み重ねられた経過が読み取れます。
日常の生活課題について子ども同士の支えあいが重要であった時代に端を発した福祉教育が、広く学校、地域で取り組まれるようになりましたが、著者は次に、福祉のまちづくり等に取り組む主体的・自律的な市民の育成を図る「市民福祉教育」を提唱しています。
これから地域福祉の担い手となる子どもたちに願いを託し、福祉教育のネットワークの形成を考えていくうえで、読んでおきたい一冊です。
(「情報BOX」『View ビュー』№159、全国民生委員児童委員連合会、2005年12月、12ページ)