長野県における福祉教育の取り組み―資料紹介(2)―

1985年3月23日に、長野県社会福祉総合センター講堂で、長野県社会福祉協議会主催の「昭和59年度 福祉教育を進める懇談会」が開催された。参加者は、社会福祉協力校をはじめ、信濃教育会、県民生児童委員協議会、58年度住民会議事業実施社協、モデル公民館事業実施公民館、県教育委員会、それに県社会福祉協議会などの関係者54名を数えた。
ここでは、その際に準備・配布された資料のなかから、長野県における福祉教育の取り組みの経緯について報告している部分を紹介する。前稿の「長野県における福祉教育の取り組み―資料紹介(1)―」と重複する部分もあるが、参考に供しておきたい。
なお、以下の記述では、1978年9月に開催された県社会福祉大会において、「信濃教育会」から「福祉の心を育成する」ことの提案がなされた。その後、福祉教育の副読本や手引書の編集は信濃教育会に委託されている、ことが注目される。そこから、ひとつは、信濃教育会と、その手になる副読本や手引書を分析・評価することによって、長野県における福祉教育の背景やその内実に迫ることができよう。また、信濃教育会と学校現場、教育委員会、公民館、それに県・市町村社会福祉協議会などとの相互関係や連携・協力の実態はどうであったのか。詳細な分析が求められるところである。

福祉教育の推進について(報告)―思いやりの心を育てる教育の実践―
昭和53年9月
第27回県社会福祉大会で採択(福祉の心の育成)
信濃教育会から福祉の心を育成することの提案が行われ採択。
昭和54年1月
長野県福祉教育大綱作成委員会発足
教育、福祉関係の21機関団体長で構成する福祉教育大綱作成委員会を発足、2年間におよぶ審議成案を得る。
昭和55年9月
第29回県社会福祉大会で採択(福祉教育大綱)
別紙「長野県福祉教育大綱」が満場一致で採択される。
昭和55年11月
福祉教育に関する調査実施
県下の小学校(416校)・中学校(192校)・高等学校(104校)の教師(各学校、男1、女1)を対象に調査実施。
昭和56年4月
福祉教育手引書の編集を信濃教育会に委託
教師のための福祉教育手引書「ともに生きる」の編集を信濃教育会に委託。
昭和56年6月
社会福祉についての意識調査実施
県下の小学校(83校)5年以上の児童及び中学校(39校)高等学校(21校)の生徒と保護者を対象に調査を実施。
昭和56年9月
第30回県社会福祉大会で「福祉教育」の推進宣言
大会第4部会に「福祉教育と実践活動」部会を設け“教育大綱”の具体的実践について討議、並びに家庭・学校・地域社会で福祉教育を推進することを宣言。
昭和57年2月
福祉教育に関する調査報告書刊行
福祉教育に関する調査・社会福祉についての意識調査結果の報告書を作成刊行。
昭和57年4月
小学校低学年用副読本の編集を信濃教育会に委託
福祉教育が家庭で育くまれることを目的に「親と子の福祉教育読本」(小1年生)の編集を信濃教育会に委託する。
昭和57年5月
教師のための福祉教育手引書「ともに生きる」を刊行配布。(30,000部)
教師のための手引書刊行、県下の幼・保・小・中・高校の教師等全員に配布・子どもらに思いやりの心の定着化を目指す。
昭和57年7月
県民会議を松本市で実施(参加者1,500名)
福祉教育大綱のねらいを実践に移していくため「福祉教育を進める県民会議」を松本市で開催。
昭和57年8月
福祉教育の推進について文部大臣に陳情
家庭教育、学校教育、社会教育の関連において福祉教育が推進されるよう小川平二文部大臣に陳情する。
昭和57年10月
「ともに生きる」の活用状況調査
県下の小・中・高校(714校)を対象に福祉教育手引書「ともに生きる」の活用状況についてアンケート調査を行う。(回収率65.8%)
昭和58年4月
小学校高学年用副読本の編集を信濃教育会に委託
小学校(4年生~6年生)を対象に人格形成の基礎づくり及び福祉の心が育まれることをねらいに、その教材の編集を信濃教育会に委託する。
昭和58年4月
福祉学習モデル公民館の指定(期間2年、補助1館5万円)
地域住民が福祉の体験学習を通じて福祉意識の向上を図るための場と機会の提供を行う。公民館8館を指定。
昭和58年4月
福祉教育を進める住民会議の推進(期間1年、補助1か所5万円)
地域住民1人ひとりに福祉の心の定着化を目指し、県下8ブロックが主催者となって会議を開催。(昭和58年度)
昭和58年8月
小学校低学年用「思いやる心」を刊行配布(34,000部)
福祉教育が家庭に定着することをねらいに、親と子の福祉教育副読本「思いやる心」を県下小学校1年生全員に配布。
昭和58年8月
教師のための福祉教育手引書「ともに生きる」の活用状況調査
県教委は、小・中学校における教師のための福祉教育手引書の使用状況をまとめ“ 手引書の効果があらわれている”とみる報告書を文部省に提出する。
昭和59年2月
福祉教育部会を開催
福祉教育の体系化とプログラムの作成を目ざして部会活動を推進。
昭和59年4月
福祉教育を進める住民会議の推進(期間1年、補助1か所5万円)
地域住民一人ひとりに福祉の心の定着化を目指し、県下8ブロックが主体になって会議を開催。(昭和59年度)
昭和59年4月
福祉教育副読本「思いやる心(中学生用)」の編集を信濃教育会に委託
中学生(1~3年)を対象に、人格形成の基礎づくりと思いやる心が育まれることをねらいに、その教材の編集を信濃教育会に委託。
昭和59年6月
福祉教育の推進について自民党に陳情
思いやりの心を育てる福祉教育が学校現場で積極的に活用されるよう、海部俊樹自民党文教制度調査会長に陳情。
昭和59年9月
思いやる心(小 高学年用)を刊行配布(37,500部)
福祉教育副読本「思いやる心」を刊行、県下小学校4年生全員に配布。
(学校備付)積極的な活用を依頼。
昭和59年10月
福祉教育副読本(小1用)思いゆる心増刊配布。(17,000部)
福祉教育副読本思いやる心(小1用)を増刊。有償配布。
昭和60年2月
福祉教育副読本(小1、小4)の活用状況調査
昭和58年度(小1年生用)及び昭和59年度(小4年生用)に配布した福祉教育副読本の活用状況について調査を実施。
昭和60年3月
福祉教育を進める懇談会を開催
現在まで進めてきた福祉教育(家庭・学校・社会)の成果と問題点並びに今後の推進方策について話し合う。

(『昭和59年度 福祉教育を進める懇談会―思いやりの心を育てる教育の実践―』長野県
社会福祉協議会、1985年、5~8ページ)