ブログ読者(N氏)から、雑感(6)―「ウチ」「ソト」と社会的包摂―(2013年6月10日投稿)の拙文に対し、以下のようなメールをいただきました。
雑感(6)の最終段落において「社協の黒子論」に対しての批評がありました。確かに、住民主体との言葉を借りて“住民への丸投げ”をしてしまっているような姿勢であれば批判をいただいても当然であるとは考えますが、全ての社協がそうであるとは思いたくありません。これからの時代において、社協はもっともっと存在感を発揮しながら、表舞台に登場できる、言い換えれば「主演」となっていかなければならないことは、世の中の社協マンは認識しているのではないでしょうか?社協は単なる「黒子」で満足しているのではないと理解しています。たとえ「黒子」と称していても、顔も出せない・・・声も出せない・・・黒子でなく、舞台上で脚光を浴びている主役から期待され・・・頼りにされる・・・、主役を引き立たせることができる“助演”的な気持ちをもっている黒子であると考えています。一“黒子”としてその存在感が確立され、どの舞台からも声がかかり、・・・黒子としてご飯が食べていけるような「ザ・黒子」って・・・何~か憧れませんか?
私たちT市社協マンは、従前から「市民から頼りにしていただける偉大なる黒子であれ!」を合言葉としてきましたが、“偉大なるプロデューサー(演出家)”に格上げしていくことを考えてみます。
N氏がいう「雑感(6)の最終段落」とは次の一節です。
「叱責を受ける覚悟であえていえば、社協や社協職員はこれまで、コミュニティワークやコミュニティソーシャルワーカーとしてではなく、「黒子」という名のもとで、結果的には、地域や住民に「丸投げ」し、それを通して「管理」「監督」し、「調和」「同化」を促す側の立場に立っていたのではないか。それでは、地域や住民は変わるはずがない。「無縁社会」では当然のことながら、逆に血縁や地縁、そして序列の人間関係(風土)を今も残している地域においてもまた、それ故に然りである。」
筆者(阪野)のこの管見に対するN氏からのメール(言説)は、実は筆者が心ひそかに期待していたものです。「社協マン」は、「ザ・黒子」から「偉大なるプロデューサー(演出家)」に格上げしていく必要がある、という指摘は強く同意するところです。ただ、「民間団体の最高経営責任者であるという認識に欠ける会長」「充て職としての立場から一歩も踏み出せない役員」「天下りの期間を無難に過ごすことに汲々とする事務局長」「公務員然として定時勤務のデスクワークに励む事務職員」等々を抱える社協がないとは言い切れないのもひとつの事実ではないでしょうか。こうした会長から職員までのオールキャストが登場する社協は存在しない、としてもです。
ここで、コミュニティソーシャルワーカーの実態把握の調査結果を纏めた『コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)調査研究事業報告書』(野村総合研究所、2013年3月)から、いささか長きにわたりますが、以下にその一文を引用しておくことにします。その叙述からは次のようなことを理解したいと思います。今日、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)の役割が重視され、その配置の必要性が増していることは、単なる社協「職員」は論外として、真の社協「ワーカー」のあり方が厳しく問われている。また、「コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)配置の前提として、民生委員・校区ボランティア等をはじめとした生活圏域における住民の地域福祉力が基盤として存在することが必要である」と述べられているように、住民の「地域福祉力」の育成・向上を図るための地域福祉教育(「市民福祉教育」)の推進が必要かつ重要となる。そして何よりも、社協と社協ワーカーには「自律」(autonomy)、「変革」(change)、「創造」(creation)と、そのためのあるいはそれに基づく「共働」(coaction)が求められる、などがそれです。なお、「自律」「変革」「創造」そして「共働」は、一面では、N氏がいう、常に新しいものを生み出す、個性豊かな「演出」(production)に通じるといえるのではないでしょうか。
本調査研究においては、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)の役割を、「個別支援」「地域支援」「仕組みづくり」の3つの活動に分けて把握した。全ての活動がコミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)の業務であるという認識はあるものの、実態としては「仕組みづくり」について十分に対応できていないという結果が、ヒアリングからもアンケートからも挙がっている。また、配置の効果が大きいと感じる活動としては、地域支援に関わる項目が上位であった。
これらの結果は、現在、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)を担う人の多くが社会福祉協議会に所属し、コミュニティワーカーとして地域支援を中心に活動してきたという歴史があるためだと考えられる。
個別支援、地域支援の両方の役割を果たしながら、既存の制度にはつながらない問題を明確にし、課題化し、解決につながる仕組みを構築していくところこそが、既存の社協ワーカー、地域包括支援センター職員の枠組みを越えた、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)ならではの役割と言える。(109ページ)
おおむね中学校区ごとにコミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)を配置することが基本であると考える。
コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)配置の前提として、民生委員・校区ボランティア等をはじめとした生活圏域における住民の地域福祉力が基盤として存在することが必要である。住民主体の小地域活動を組織だった活動に昇華させ、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)の活動との連携体制をあわせて構築することが重要である。
現時点では、コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)を社協職員が兼任で担っている場合が大半であるが、本来的には所属機関は問わない専門職である。ただし、「仕組みづくり」までを実施していくことを考えると、行政との連携がとりやすい(行政計画に反映しやすい)体制が必要であろう。(111ページ)
追記
コミュニティソーシャルワーカー(地域福祉コーディネーター)の活動については、筆者はとりあえず次のように考えています。
(1)個別支援:地域・住民と一緒に個人の生活課題を解決し、その暮らしを支える
(2)集団支援:地域・住民のネットワークを形成し、集団・組織の活動を支える
(3)地域支援:地域・住民の参加と協働(共働)による地域づくりを支える
(4)仕組みづくり:新しい問題が生じた場合の、課題解決の仕組みと仕掛けを創る