参加型地域ふくし懇談会における懇談内容と項目

地域福祉計画や地域福祉活動計画の策定に際して、各界各層の住民の参加(参集、参与、参画)による「懇談会」の開催は欠かせません。また、懇談会のありようが計画内容の妥当性や具体性、地域性、それに計画の実現性などを決するといっても過言ではありません。しかし、これまでの懇談会は、一部を除いて、その多くは一方的な情報提供や、形式的で形骸化したものにとどまりがちであったといわざるを得ません。その原因のひとつは、参加者の発言(開陳)や対話(協議)を促し、論点の整理や課題の明確化、相互理解や合意形成などを図るためる方法・手法が必ずしも十分に検討・準備されず、また有効に活用されてこなかったことにあります。いまひとつは、懇談会における情報提供・交換や協議の過程そのものが、問題の学習や課題解決に向けた主体形成の場であること、すなわち「福祉教育」の実践であるということがいわれるほどには留意されてこなかったことによると思われます。
今回、ブログ読者から、懇談会を開催するにあたって、参加住民が自分の発言や対話の内容をより明確に認識・理解するとともに、参加者が互いに共感し、共有化するための “アイディア”  を求められました。そこで、取り急ぎ、以下のような「参加型地域ふくし懇談会における懇談内容と項目」(マトリックス)を考えてみました。
懇談会の名称を「参加型」としたのは、参加者全員が忌憚なく語りあうことができる懇談会であること。そして、参加には「参集」(いあわす)、「参与」(かかわる)、「参画」(にないあう)の3つの段階を考えることができますが、最終的には「参画」をめざすとしても、いずれの段階の参加も認めあうことを意味します。また、「地域ふくし」は、地域(地元)に暮らすすべての住民の だんの らしの あわせ についてみんなで考えあい、ともに汗を流すことを意図しています。
懇談会のテーマは、おおよそ次の4つです。懇談会では(1)のテーマから順に語りあい、1回の懇談会の時間は全体で90分から120分程度、子どもや高齢者、障がい者、外国籍住民などを含めた多くの住民が参加できる工夫や、可能な限り開催の回数を重ねるなど、意図的で計画的・継続的な取り組みが求められます。
(1)私が住んでいる「まち」の安全・安心なところ、自慢できるところ。
(2)普段の暮らしのなかで、私にとっての心配ごと、悩みごと、困りごと。
(3)私が住んでいる「まち」が、こんな「まち」になったらいいな。
(4)(3)を実現するために、私ができること、私たちがしなければならないこと。
また、次のような「行」(圏域、機関・施設・団体)と「列」(属性)からなるマトリックスを作成してみました。このマトリックスのねらいは、自分や他の参加住民の発言や対話の内容が、行と列が交差するどの「セル」に位置するかを明らかにすることにあります。それによって、発言や対話の内容の明瞭化や共有化が促され、それを通して自分や自分たちが抱える地域の問題を明確化し、共有化していくことになります。さらには、課題解決の着眼点や着想が導き出されことが期待されます。こうした一助になれは幸いです。
なお、「行」の「圏域」は、隣近所の圏域/組・班の圏域/自治会・町内会の圏域/小学校区の圏域/中学校区の圏域/市町村支所の圏域/隣接支所の圏域/市町村の圏域/隣接市町村の圏域/県域、です。「機関・施設・団体」は、組・班/自治会・町内会/小学校/中学校/公民館等/NPО・ボランティア/市民活動センター/地区社協/市町村社協/市町村支所/市町村/隣接市町村/県・国/その他、です。
「列」の「属性」は、自分/家族/親戚/地域住民(子ども/高齢者/障がい者/子育て世帯/ひとり親家庭/地元定住者/移住者/移住定住者/外国籍住民/その他)、です。
ここで、一例を示しておきます。
「高齢者や障がい者などの災害弱者に対する災害時の援護に関して、すでに自治会長や民生委員・児童委員などとのあいだで情報を共有しています」という発言は、[A]、[(1)A](括弧内の数字は、懇談会のテーマ(1)から(4)を表示します。) のセルに位置づきます(記入します)。
「隣に外国人が引っ越してきました。よそ者扱いはしたくないのですが、考え方や生活習慣などについてよく分からないので、どのように付きあったらいいのか困っています」という発言は、[B]、[(2)B]のセルに位置づきます。
「まち全体を総合的にバリアフリー化し、お年寄りや障がいのある方など、だれもが気軽に行き来し、明るく、楽しいまちづくりを進めてほしいと思います」という発言は、[C]、[(3)C]のセルに位置づきます。
「最近、お隣のご主人がお亡くなりになり、奥様は一人暮らになりました。これまであまりお付きあいはなかったのですが、これからは毎日、ご挨拶をしようと思っています」という発言は、[D]、[(4)D]のセルに位置づきます。
「学校での “いじめ” があとを絶ちません。地域の大人たちが、学校や先生方と協力して、その解決や未然防止を図るための仕組みづくりに、積極的に取り組む必要があるのではないでしょうか」という発言は、[E]、[(4)E]のセルに位置づきます。

オリジナル12月17日

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また、「私たちの自治会では、班の活動として、班に在住の高齢者が中心になって、小学生の登下校時に交差点に立ち、子どもたちの安全確保を図っています」という発言は、3次元のマトリックスでは[F]のセルに位置づきます。

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