茨城県における「子どもヘルパー」派遣事業 と 福祉教育―資料紹介―

少子化や核家族化が進展する中、高齢者と子どもが触れ合う機会が減少するとともに、地域における助け合いや連帯感が希薄化しており、高齢者の孤独化などが課題となっている。そこで、4年生以上の小学生を「子どもヘルパー」に任命し、高齢者宅などに訪問し、話し相手やお手伝いボランティア等を行い、高齢者の安否確認や子ども達のいたわりの心を育むことにより、地域全体で高齢者を支える意識を醸成する。(全国知事会「先進政策バンク」より)

茨城県では、2010(平成22)年度から2011(平成23)年度にかけて、「4年生以上の小学生を『子どもヘルパー』」に任命し、‥‥‥地域全体で高齢者を支える意識を醸成する」ことをめざして、「いばらき子どもヘルパー派遣事業」に取り組んだ。その活動内容を纏めた『いばらき子どもヘルパー派遣事業報告書』が、2013(平成25)年9月に茨城県(保健福祉部長寿福祉課)から刊行されている。
本稿は、その報告書などに基づいて、茨城県における取り組みと、県からモデル地域選定を受けたかすみがうら市による取り組みの概要を紹介するものである。
なお、同様の取り組みに、富山県高岡市の社会福祉協議会が1996(平成8)年度に創設した「ジュニア福祉活動員」育成事業や、熊本県阿蘇郡産山村の社会福祉協議会が2000(平成12)年度から継続的に実施している「子どもヘルパー」事業がある。前者は、地域の小学校6年生全員が「ジュニア福祉活動員」に任命され、地域の大人(福祉活動員、民生委員など)と一緒に一人暮らし高齢者等への友愛訪問活動を行うものである。後者は、小学校4年生以上から中学生を対象にした事業で、2014(平成26)年度2月現在、300人を超える「子どもヘルパー」が高齢者の生活支援活動を行ってきている。付記しておくことにする。

茨城県における「子どもヘルパー」派遣事業

2010(平成22)年度と2011(平成23)年度の、茨城県における当該事業の取り組みの概要は次の通りである。

1 背景
少子高齢社会を迎え、高齢者が安心し、いきいきと暮らせる地域づくりや高齢者の健康づくり ・生きがいづくりの重要性が高まっています。
また、近年、ひとり暮らし高齢者や高齢夫婦のみの世帯が増加しており、少子化や核家族化が進展する中、高齢者と子どもが触れ合う機会は減少しています。
高齢者と子どもが触れ合う機会を通して、高齢者を地域みんなで支え合う地域の絆づくりを推進することが求められています。
2 概要
モデル事業として県内の市町村社会福祉協議会を選定し、子どもヘルパーとして任命した4 年生以上の小学生が、ひとり暮らしの高齢者などの家庭を訪問し、話し相手やお手伝いボランティア等を行う事業です。
(1) 実施主体 ・期間
県内8 カ所のモデル地域を県が選定
期間/実施主体
平成22 年度~平成23 年度/石岡市社会福祉協議会、守谷市社会福祉協議会、小美玉市社会福祉協議会、利根町社会福祉協議会
平成23 年度/笠間市社会福祉協議会、かすみがうら市社会福祉協議会、城里町社会福祉協議会、河内町社会福祉協議会
(2) 活動エリア
原則小学校区~中学校区以内とし、市町村社会福祉協議会が選定
(3) 対象  
小学4年生~6年生 約30 名
(4) 子どもヘルパー活動内容
〇お手伝いボランティア
ひとり暮らし高齢者宅、昼間独居高齢者宅などを3~4 人で訪問し、話し相手や肩たたき、お掃除などのお手伝いを行います。
〇交流会 ・福祉施設訪問
初顔合わせとして、交流サロン等で交流会の開催や地域の高齢者施設等を訪問します。
〇お便り活動
年賀状や季節の絵手紙などを高齢者宅へ郵送します。
〇活動報告会の開催
(5) 実績
平成22年度
子どもヘルパー数 :113人、高齢者宅訪問 :10回、交流会等 :6回、施設訪問 :2回、お便り活動 :13回
平成23年度
子どもヘルパー数 :434人、高齢者宅訪問 :30回(284件)、交流会等 :28回、施設訪問 :8回、お便り活動 :23回
子どもヘルパーに、やる気と誇りを持って活動してもらうためにピンバッジを配布しました。
3 参考
〇平成23 年9 月、全国知事会において、先進政策バンクに登録されている2、325 件の先進的な政策の中から、本事業を含む27 件が頭脳センター専門委員会による評価 ・審査の結果、優秀政策(ベストプラクティス)に選定され、全国知事会長から表彰されたところです。本県では、初めての受賞になります。
〇平成22 年度から平成24 年度の3 年間のモデル事業として、1 団体2 年間の継続事業として開始しましたが、財源としていた安心子ども基金の終了に伴い、平成23 年度をもって茨城県の事業は終了しています。
しかし、4 団体が社会福祉協議会の独自財源や地域支援事業を活用し、平成24 年度も事業継続してくれたところであります。

かすみがうら市における「子どもヘルパー」派遣事業

茨城県の当該事業は、「安心子ども基金」(文部科学省補助金)の終了に伴い、2011(平成23)年度をもって終了した。そこで、以上の8カ所のモデル地域のうち、かすみがうら市では、2011(平成23)年度・県事業としての取り組みのあと、2012(平成24)年度・市事業、2013(平成25)年度・市社会福祉協議会事業、そして2014(平成26)年度はまた市事業として、当該事業を継続的に実施している。市の事業として実施されるに際しては、2012(平成24)年3月に「かすみがうら市子どもヘルパー派遣事業実施要項」を制定し、制度的・積極的な取り組みがなされていることが特筆される。
2011(平成23)年度から2013(平成25)年度までのかすみがうら市における当該事業の取り組みの概要と、2012(平成24)年度における「かすみがうら市子どもヘルパー派遣事業実施要項」は次の通りである。

かすみがうら市 ・市社会福祉協議会による取り組み
1 事業実施を希望した理由
最近の少子高齢化や核家族化の進行に伴い、家庭機能の低下や親子関係の希薄化、さらには、地域での子育て機能が低下している中、要保護児童数が増加しており、特に核家族化率の高い市街化区域の家庭教育については対処すべき課題が多くなっております。
こうした状況を踏まえ、学校と連携し地域の高齢者への理解とかかわりを深めることにより、いたわりや思いやりの心を育めればとの思いから、実施に至りました。
2 概要
1年目は、急な実施だったため、準備期間を設け、秋からスタートしました。モデル校の5学年児童から希望者を募り、主に土曜日に実施しましたが、スポーツ少年団等と重なってしまうことも多く、すべての課程に参加できない児童が出てしまい、残念だったとの感想もきかれました。
2年目は、モデル校の協力で、総合的学習の時間を利用させてもらうことができたため、5学年児童全員を対象に実施しました。1期を「第1クール」、2 ・3学期を「第2クール」と分け、それぞれ3つの内容をクラスごとにローテーションで実施しました。
〈平成23年度〉
指定校 :下稲吉東小学校5年生(希望者) 登録22名
第1回 ・10/29(土) 参加人数14名 
〇任命書公布
〇オリエンテーション 
①子どもヘルパー派遣事業について
②かすみがうら市の福祉について
〇学習会
①ヘルパー活動の目的や仕事について
②高齢者とのコミュニケーションについて
〇インスタントシニア体験
第2回 ・11/26日(土) 参加人数13名 
〇シルバーリハビリ体験について(体験)
〇交流会(ニュースポーツ《輪投げ》の実施)
第3回 ・12/5(月) 参加人数19名
〇絵手紙講習会
クリスマスカードの作成
作成したカードは前回交流会をした角来青葉会のみなさんにお配りしました。
第4回 ・2/4(土) 参加人数14名
〇ヘルパー訪問活動(中志筑地区)
高齢者のお宅を訪問し、肩たたき・掃除のお手伝い、千代紙工作をして交流しました。
第5回 ・3/3(土) 参加人数14名
〇活動感想文作成・活動報告の発表
〇修了証交付
〈平成24年度〉
指定校 :下稲吉東小学校5年生(全員:総合的な学習の時間を利用) 登録96名
第1回 ・6/14
〇任命式
※任命書交付
※あいさつ
※オリエンテーション
①子どもヘルパー派遣事業について
②かすみがうら市の福祉について
〇学習会
※講話
①ヘルパー活動の目的や仕事について
②ヘルパーということ、高齢者との接し方
第2回 ・6/22、第3回 ・7/6、第4回 ・7/13(第1クール)
テーマ :高齢者について知り、交流の手段を学ぶ
全体を3組〈クラス〉に分け、次の活動をローテーションで実施。
(1)インスタントシニア体験
年を重ねると体の動きや感覚はどうなるかを体験しました。
(2)絵手紙講習
お便り活動に役立てられる、絵手紙を習いました。
(3)調理実習
おじいちゃんおばあちゃんが子どもの頃は、どんなおやつを食べていたのかを知るため、調理実習をしました。〇すいとん、〇蒸しパン。
第5回 ・11/30、第6回 ・12/14、第7回 ・1/18(第2クール)
テーマ :高齢者との交流を図る
全体を3組(クラス)に分け、次の活動をローテーションで実施。
(4)交流会
角来青葉会老人クラブのみなさんを教室に招いて、交流会をしました。
(5)グランドゴルフ交流会
高齢者に人気のあるグランドゴルフを千代田グランドゴルフクラブの皆さんと一緒に楽しみました。
(6)訪問活動
ひとり暮らしやおじいちゃん、おばあちゃんだけで生活している方のおうちを訪問し、お手伝いやおしゃべりをしました。
〇お便り活動
お宅訪問や交流会で知り合ったおじいちゃん、おばあちゃんに絵手紙を描きました。
第8回 ・3/1
〇活動報告会
各自でこれまでの活動をふりかえり、まとめを行った後、全体会でクラスの代表者が感想を発表した。
〇修了式
※修了証授与
※あいさつ
〈平成25年度〉
指定校 :下稲吉東小学校5年生(全員 :総合的な学習の時間を利用) 登録98名
第1回 ・9/5
〇任命式
※任命書授与
※講話(お話し)
①わたしたちのまち「かすみがうら市」について
②ホームヘルパーの仕事と目的について
第2回 ・10/1、第3回 ・10/10、第4回 ・10/18(第1クール)
テーマ :高齢者 ・障がい者について理解し、交流の手段を学ぶ
全体を3組(クラス)に分け、次の活動をローテーションで実施。
(1)インスタントシニア体験
体験を通し高齢者について体験する。
(2)シルバーリハビリ体験
転倒防止の体験を学び、からだの機能について知る。
(3)手話体験
聴覚障がい者との交流の手段を学ぶ。
第5回 ・10/25、第6回 ・11/22、第7回 ・12/13(第2クール)
テーマ :高齢者との交流 ・救命入門コースを学ぶ
全体を3組(クラス)に分け、次の活動をローテーションで実施。
(4)救命入門コース
消防署員の方の協力でAED等の、いざという時に役立つ方法を学ぶ。
(5)グランド・ゴルフ交流会
高齢者に人気のグランド ・ゴルフを通してね交流を図る。
(6)訪問活動
ひとり暮らし ・おじいちゃんおばあちゃんだけで生活している方のお宅を訪問しねお掃除やお話し相手などを通して交流を図る。
第8回 ・12/20
〇活動報告会
〇修了証授与

「かすみがうら市子どもヘルパー派遣事業実施要項」
平成24年3月27日
訓令第11号
(目的)
第1条 この訓令は、小学校4年生から6年生までの児童をかすみがうら市子どもヘルパー(以下「子どもヘルパー」という。)に任命し、高齢者の家庭を訪問して、話し相手、お手伝いボランティア等をすることにより、児童と高齢者との世代間交流を通して高齢者を地域みんなで支え合うための地域のきずなづくりを推進することを目的とする。
(実施主体)
第2条 事業の実施主体は、本市とする。
2 事業は、市社会福祉協議会(以下「市社協」という。)へ委託することができるものとする。
(地域の指定)
第3条 事業の実施地域は、原則として小学校区区域を単位として指定する。
(実施期間)
第4条 事業の実施期間は、4月1日から翌年3月31日までの1年間とする。
(推進会議の設置)
第5条 事業の円滑な実施及びその成果、普及等の役割を担うため、推進会議を設置する。
2 推進会議は、次に掲げる者を構成員とする。
(1) 市内の学校関係者
(2) 福祉事業関係者
(3) 行政担当者
(4) 介護事業関係者
(5) その他事業の円滑な実施に関して必要な者
3 推進会議は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 事業への助言及び評価
(2) 事業の取り組み状況等の関係機関等への情報発信
(3) その他事業の円滑な実施に関して必要な業務
(任命)
第6条 子どもヘルパーの対象者は、小学校4年生から6年生までの児童とする。
2 子どもヘルパーの任期は、1年間とする。
3 子どもヘルパーとして任命した児童には、市長が任命書(様式第1号)を交付する。
(事業の内容)
第7条 事業は、次の各号に掲げるとおりとし、その内容はそれぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 訪問活動の実施 概ね2人から4人の子供ヘルパーのチームで、必ず民生委員児童委員、市社協職員等が児童を引率して、地域の一人暮らし高齢者宅、高齢者のみの世帯、昼間独居高齢者宅等を訪問し、肩たたき、お掃除等のお手伝い、話し相手、昔遊び等を行う。
(2) お便り活動の実施 年賀状、クリスマスカード等のお便りを高齢者宅等へ送る。
(3) 任命式及び学習会の開催 子どもヘルパーの任命式を開催するとともに、子どもヘルパーの活動及び地域福祉に係る小学生向けの学習会を開催する。
(4) 交流会の開催 指定地域の高齢者等と子どもヘルパーとの初顔合わせとして、交流会を開催する。
(5) 活動報告会の開催 子どもヘルパーの1年間の活動の総括として、活動報告会を開催する。
2 前項第1号に規定する訪問活動の終了後に、当該活動の引率者は、活動実施報告書(様式第2号)を提出するものとする。
3 前項第1号に規定する訪問活動により訪問を受けた高齢者等は、謝礼金を負担しないものとする。
(委任)
第8条 この訓令に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
(施行期日)
1 この訓令は、平成24年4月1日から施行する。
(失効)
2 この訓令は、平成25年3月31日限り、その効力を失う。
様式第1号(第6条関係)

 以上の、茨城県とかすみがうら市における「子どもヘルパー」派遣事業に関して、若干の所見(所感)を述べることにする。
(1)当該事業のねらいは、小学校4年生から6年生までの子どもを「子どもヘルパー」に任命し、高齢者との交流活動を通して、高齢者に対する「いたわりの心」を育成することにある。その際、その底流をなす高齢者についての認識は、高齢者イコールいたわりの対象イコール弱者(社会的弱者)、というものであろうか。
いうまでもなく、高齢者の心身の状態をはじめICFの理念・モデルにいう「活動」や「参加」は多様であり、個々別々である。社会的排除に向き合い、社会的包摂に向けた福祉教育を推進するためには、高齢者は「支援や援助を必要とする弱者」であるという、ステレオタイプ化されたイメージの「老人神話」からの脱却をいかにして図るかが重要となる。福祉教育は、高齢者をはじめすべての地域住民のライフ(Life:生命、生活、生涯)の多様性と同一性、地域性と協働性について理解し認識することからはじまる。
(2)「子どもヘルパー」に「やる気と誇り」をもって活動してもらうために「ピンバッチ」(茨城県)の配付や「任命書」の公布が行われ、修了時には賞賛と激励のために「修了証」(かすみがうら市)が授与されている。子どもたちの活動への参加意欲を高め、次の活動に繋げるための工夫として評価できよう。
さらに当該事業を計画的・継続的に推進するためには、学校内や学校外の他機関との協働支援体制を整備・強化し、先ずは小学校における当該事業の定着化・伝統化を図ることが重要となる。加えて、中学校や高等学校での新たな取り組みを促すことが求められる。
(3)学校福祉教育においては、これまで、訪問・交流活動、収集・募金活動、清掃・美化活動の「3大体験活動」や、高齢や障害の疑似体験、手話や点字の学習、施設訪問(慰問)の「3大プログラム」などを中心にその実践活動が展開されてきた。しかもその際、その活動が観念的・精神的なものにとどまったり、活動そのものが目的化したりしがちであったといってよい。
「子どもヘルパー」の諸活動は、一面においては、これまでの福祉教育実践活動の枠内にとどまるものでもある。福祉教育(市民福祉教育)は福祉の(による)まちづくりの主体形成を図るための教育実践である。とすれば、地域診断 → 地域理解 → まちづくり学習 → まちづくり、というプロセスを経る活動を、「子どもヘルパー」の諸活動のなかに、あるいはその延長線上に組み込むことが肝要となる。
(4)「子どもヘルパー」の諸活動は、あくまでも子ども(小学生)を対象としたものである。それゆえに、教師や保護者、地域の一般住民への働きかけは必ずしも十分なものではない、といわざるを得ない。その結果、かすみがうら市においては2クールの一定期間の取り組みや、学校内の、しかも社会福祉協議会主導の福祉教育活動に矮小化される危険性なしとしない。
こんにち、学校を中心とした福祉教育(学校福祉教育)と地域を基盤とした福祉教育(地域福祉教育)を融合した「市民福祉教育」の推進が求められている。「子どもヘルパー」の諸活動を介して、教師や保護者をはじめ、民生委員、ボランティア、地域福祉関係者、地域組織・団体関係者、それに一般住民などがいかに連携・協働し、“ 地域ぐるみの福祉教育 ”を展開するかが問われることになる。
(5)学校における福祉教育は、福祉教育目標の達成が学校教育目標の実現に通じることから、「全教科全領域」で実施・展開すべきであるといわれてきた。また、周知のとおり、2002 (平成14)年度より、小・中学校で、「地域や学校、児童の実態等に応じて、横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うもの」(小学校学習指導要領)として、「総合的な学習の時間」がスタートした。それ以降、「総合的な学習の時間」を“ 活用 ”して、福祉教育実践が展開されることになる。かすみがうら市における「子どもヘルパー」の諸活動はまさにそれである。
「総合的な学習の時間」は、子どもたちが「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること」などをそのねらいとする。「全教科全領域」における福祉教育、「総合的な学習の時間」における福祉教育、その本来の趣旨やねらいに即した取り組みについて再考する必要がある。
(6)評価活動のともなわない教育活動はない。教育評価は、教育活動の過程や成果を種々の観察や資料に基づいて客観的に捉え、教育目標を達成するための改善に役立たせるための活動である。さらには、新たな教育活動を生み出すための活動でもある。福祉教育実践においては、「評価」(evaluation、assessment)や「ふりかえり」(reflection)が重要であるといわれてきたものの、実際には、かすみがうら市のように「感想文」の作成や「活動報告会」の開催にとどまりがちである。
福祉教育実践においては、自己・他者・社会の生活問題との ①出会い(把握、関与) → ②向き合い(対面、相関) → ③話し合い(討議、明確化) → ④分かち合い(共感、共有化)→ ⑤支え合い(連携、共働) → ⑥ふりかえり(評価、修正)、あるいは実践活動を通して ①学び → ②気づき → ③ふりかえり → ④変わり → ⑤(新しく)動く、というプロセスと各段階における評価活動が大切になる。その際、学校福祉教育の評価は、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」という観点別の評価を、それに適合するさまざまな評価技法を用いて適正に行うことが求められる。

付記
本稿の執筆に際しては、かすみがうら市社会福祉協議会のT女史のご高配を賜りました。記して厚くお礼を申し上げます。