“三原色” の思考と “仲間時間” の実践―住民懇談会報告―

今日は、平日の10時から12時の時間帯にもかかわらず、自治区の区長さんや役員の方をはじめ、コミュニティ会議福祉健康部会の皆さん、民生委員やボランティアの皆さん、老人クラブの会長さん、障がい者福祉施設の施設長さん、中学校の校長先生、市議会議員の先生など、40名ほどの方々にお集まりいただきました。前回の住民懇談会にも増して、有意義な懇談会となりました。また、私自身も多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
感想めいたことになりますが、少しお話をさせていただきますと‥‥‥。
先ず、今日のグループワークはいかがだったでしょうか。赤・黄・青の付箋紙をうまく活用されてカードワークを行い、夢や希望について話し合い、意見などを出し合い、活発な議論がなされていたと思います。そして、この地区がめざすべき福祉のまちの姿・かたちや中身(内容)を、皆さんでイメージ化することができたのではないでしょうか。
社協が準備しましたワークシートも良くできており、活用しやすかったのではないでしょうか。70分ほどの短い時間ではありましたが、皆さんの議論が弾んでいたと思います。「色(色材)の三原色」といわれる色は、赤・黄・青と記憶しておりますが、信号機の色ではありませんが、「赤」(「こんな地域になったらいいな」)のところでは、しっかりと立ち止まって夢を語る。「黄」(「自分ができること」)のところでは、周りのことなどを気に留めながらも、まちづくりのために一歩踏み出す。「青」(「地域として、皆で取り組んでいくべきこと」)のところでは、まちづくりのために皆で力強く歩みを進める。社協は、こんなことを念頭に置いて、あえて赤・黄・青の三原色を使ったワークシートと付箋紙を用意したのではないか。多少深読みの感無きにしも非ずですが、社協の方、いかがですか。
赤・黄・青の三原色の心理的な作用や効果については、色彩心理学などでどのような所説があるか知りませんが、この三原色をうまく使うことによって、皆さん方の思いや考えをお互いに、豊かに引き出し合うことができたのではないでしょうか。
それぞれのグルーブでは、「光の三原色」の赤・緑・青のうちの、「緑」(「理想とする福祉の“まち”」)のところで、キャッチフレーズを考えていただきました。第1グループは「世代が継がり住民が力を発揮できる住み続けたい結(ゆい)の町」、第2グループは「ふれあいを大切に明るい声がひびくまち」、第3グループは、キーワードですが、「老若男女 ふれあい つどい やさしい 美しい 犯罪のないまち」、第4グループは「声かけと思いやりのあふれるまち」というものです。それぞれのフレーズには皆さん方の夢が、またこの地区ならではの「理想とするまち像」が表現されているのではないかと思います。
この4つのフレーズを、社協の職員(コミュニティソーシャルワーカー)が「みんなの力とみんなの声を感じながらふれあい豊かに住み続けられるまち」と、うまく纏めてくれました。先ほどの説明を伺っていて、「みんな」「力」「声」そして「住み続けられる」という文言には、誰もが腑に落ちる「確かさ」と「強さ」があると感じました。
先日、ある地区にお邪魔したときに、このキャッチフレーズについて、「こんなことを考えて何の意味があるのか。地域の問題をひとつひとつ“潰していくこと”が必要であり、そのことを考えるべきであって、抽象的な言葉遊びは無駄である」というお叱りを受けました。「問題を潰す」という言葉は気になりますが、それはひとまず置くとしても、私はキャッチフレーズの作成は不必要だとは思っておりません。それは、福祉のまちについて夢を語り、福祉のまちづくりについて思いをひとつにし、「軸」がブレない取り組みを皆で進めていくためにも必要なことだと思います。
夢は語るものですが、追い求めるものでもあり、また育むものです。夢を語った以上は、その夢の実現をめざして、皆で汗を流すことが求められます。真摯に夢と向き合い、積極的に夢を追い求める住民が増えれば、地域にとって、それぞれの地区にとってプラスになるのではないでしょうか。
皆さん方には、夢を実現するために、地域のリーダーとして主導的な役割を果たすことが求められると思います。ただし、ヒーローやヒロインのような唯一の強いリーダーとしてではなく、メンバーシップやフォロワーシップを兼ね備えた一人のリーダー、地域住民として活動することが期待されます。「この地域には強いリーダーがいないからダメだ」という嘆きの言葉を聞くことがありますが、そうでしょうか。強力なリーダーがいない地域は「ダメ」な地域ではなく、強力なリーダーを必要とする地域が実は「不幸」な地域であるかも知れません。
この地区は、高齢化率が約13%と市内で一番低く、若い人が多いまちです。子どもや若者たちと一緒になって、子どもや若者の夢を育むための活動にも頑張っていただければと思います。また、今日はお見えになっておりませんが、子どもたちや障害のある方々、外国籍住民の皆さん、さらには福祉サービスを利用されている方々、できる限り多くの方々にお声かけいただき、お出かけ願えるような懇談会を、皆さんの手で今後も計画的・継続的に開催していくことが必要であり重要であると思います。
2点目ですが、いささか蛇足めいたことになりますが‥‥‥。
今回初めて気づいたのですが、男性の皆様はそのほとんどの方が腕時計をはめておられます。しかし、ほとんどの女性の方ははめておられません。どうしてでしょうか。男性の方は、退職された方が多いと思いますが、いまはこの地元で、約1万人の地区住民のために活動されている方々だと思います。男性の方は、会社勤めのときには腕時計の時間で、会社の時間で仕事中心の生活をされていたのではないでしょうか。「時計時間」の生活が長く続きますと、そういう生活から、腕時計の時間に拘束された生活から抜け出すことが難しいのではないでしょうか。生活習慣といえばそれまでのことですが。
それに対して、女性の方々は、この地元を中心に、隣り近所の方々をはじめいろんな方々との関わり合いのなかで暮らしておられると思います。多くの友達や仲間がこの地元にいらっしゃる。そういう方々とご一緒に、明確な時間の流れというよりは自由でゆったりとした、融通の利いた時間、「仲間時間」あるいは「地元時間」といいますか、そんな時間のなかで生活をし、趣味活動や地域活動などに取り組んでおられる。だから、わざわざ腕時計をする必要もないのではないか。そんなことを思った次第です。
そして、地域活動へのはじめの一歩は、趣味や特技、あるいは経験や知識を活かした身近な活動に、できるときに、できるところで、気心の知れた仲間と一緒に取り組む。そんなことが重要であるともいわれますが、いかがでしょうか。
今回の地域福祉活動計画に基づく福祉のまちづくりは、時計時間と仲間時間(地元時間)がうまく織りなされるなかで、この地区ならではの、「私発」の、そして1万人の「住民総参加」の活動や運動として進められていかなければならないのではないか。男性の方も女性の方も、会社人間であった方も、この地元地域・社会の住民として皆で、豊かな知識と長年の経験に基づく知恵、そして「力」を出し合って、福祉のまちづくりにこれまで以上に関わり合っていくことが必要ではないか。そんな感想をもち、またそんな思いがしました。
雑駁ですが、以上です。ありがとうございました。
10時

【注】
(1)T市社協が主催したH地区における第2回住民懇談会は、(1)第1回の振り返り(20分)、(2)意見交換/グループワーク(70分)、(3)全体会/グループ報告・地区のキャッチフレーズの決定・まとめ(30分)の内容と時間で開催されました。本稿は、筆者(阪野)の役割であった最後の「まとめ」を記憶に基づいて整理したものです。
(2)T市社協が作成したワークシートでは、「赤」(「理想とするべきまち像」)、「黄」(「自分としてできること」)、「青」(「地域としておこなっていくべきこと」)、「緑」(「理想とするまち像」)となっています。当初、2回目の懇談会のテーマは「(3)私が住んでいる “まち” が、こんな “まち” になったらいいな」「(4)(3)を実現するために、私ができること、私たちがしなければならないこと」とされていました。本文中と上記のワークシートの文言は、筆者なりに加筆・修正したものであることをお断りしておきます。