いやな予感が 当たった
暴風雨の夜
突然テレビの画面が消えて 真っ暗になった
停電は
闇夜(やみよ)に ひとり放り出された気分
懐中電灯が もの悲しく 闇を射る
突然 どんどんどんと 強く戸を叩く音と 怒鳴り声
雨風の音に 逆らいながら
「おばちゃん、大丈夫かい! ここから逃げるぞ!」
慌てて戸を開ける
「どうした!」
「裏の川があふれるかもしんねえ。急いで逃げるぞ!」
手荷物を抱えて 降りしきる豪雨の中 車に乗った
眠れぬ朝が 静かに明けた
家は 無事だった
ほっとして 張り詰めていたこころが 緩(ゆる)んだ
「大丈夫?」と 隣の嫁さんが 声をかけてくれた
誰か彼かに 気遣ってもらいながら 今日も無事だった
仕合わせは きっと こんな暮らしの中にある
一人暮らしだけど ひとりぼっちではない
電気は まだ通じない
でも
他人(ひと)との こころの通じ合いが
わたしの暮らしを さりげなく 支える
だから 決めた
もう少し 甘えようと
できれば ここで … いのち尽きたい
きっと おもいが叶うと信じて
今日を生きる
〔2018年10月1日。秋田県小坂町地域福祉セミナー・鹿角市小地域ネットワーク活動研修会。2019年夏も台風が列島を容赦なく襲う〕