秋冬春夏~市街地編

木々が色づき 秋が深まる
このあたりも ずいぶん空き家が多くなった
町内会活動で 空き家の見守りが 日課となった
車が 駐車してある
誰かが 訪ねて来たみたいだ
声をかける
「いつもありがとうございます」
そこの息子が 父親のものを取りに来たという

冬 雪降る寒い日だった
空き家の玄関に 喪中の紙が貼られた
父親は 自分の家に ようやく戻ってきた
町内会で 葬式を手伝った
「ありがとうございました」
息子は 深々と頭を下げた 

空き家の庭に こぶしの白い大きな花が 咲いた
春のお彼岸 父のお骨を納めに来た
町内のお世話になった方々に 菓子折を持って挨拶回り
律儀な父親譲りの 息子だった

暑い陽ざしが照りつける 夏の昼下がり
ブルが 空き家の解体作業を始めた
数日で 綺麗な更地になった
看板に「売地」と書いてあった
この土地には なかなか買い手はつかないだろう
それでも 更地にしてもらうだけ ありがたい
放置されたら 朽(く)ちるだけでなく 
ここが 廃(すた)れいく 風景に化す

せめて 残すもの
葬式代と家屋の解体費用 300万円 

〔2019年8月9日書き下ろし。離郷と地域の空洞化を考える〕