春夏秋冬そして春~ラジオ体操

朝6時過ぎ 吐く息がまだ白い
駅前広場に ぼつりぼつりと 人が集まってきた
まだ歩道脇には 雪が残る 春4月
ラジオ体操の 始まりの日(あさ)だった

夏休みになると
年寄りたちは 張り切った
孫たちに 不細工(ぶさいく)な格好は 見せられない
化粧も おしゃれも少しして 集まってくる老女たち
子どもたちが 元気を与えてくれた
この体操が 朝の日課になって もう5年目の夏だった

鎮守(ちんじゅ)さんのお祭りは
ラジオ体操で集まった 男衆(おとこしゅう)から
子ども神輿(みこし)を復活しよう と声が上がった
若い母さんや父さんも
昔を思い出したのか 楽しそうに手伝った
ばさまと母さん 子どもらの衣裳(いしょう)と化粧の担当
じさまと父さん 古い神輿のリニュアール
当日 十数年ぶりに 祭りの楽しさを 子どもらに 引き渡した
振る舞い酒は 大人のこころに しみわたった

雪が降るまで続けようと みんな頑張った
今年も 終わりの時が 来たようだ
ラジオ体操は 健康のバロメーター
みんなが集まる機会は 春までクローズ
長い冬が 心も体も 閉ざさぬように
隣近所で 見守り声かけ 冬場が本番
さあみんな 冬こそ 町内の団結力を見せようぞ!
一人ひとりの 目配りが 
いのちを護る マチの防人(さきもり)となる

春の陽ざしが まばゆい朝
駅前広場は おはようの挨拶が あちこちで交わされていた

〔2019年8月12日書き下ろし。子どもが少ないと嘆くよりも、今いる子に引き継げるのは何かを考えたみたい。そして、人の命と暮らしを護る防人たちの姿も〕