住宅の密集するなかに
ポコッと 小さな公園がある
昼間は 若い母親が 乳児や幼児を連れてやってくる
放課後は 小学生が 遊び回る
夕方 下校途中の高校生が 語り合う
夜は 中学生が 戯れる
近くの中学校に通う生徒たち
この学校も 一時の荒れた状態から 回復しつつあるという
いまも 授業を拒否する子どもらは 校舎の内外に たむろする
昼間 行き場がない彼らには 学校が仲間と戯れる 唯一の居場所なのだ
夜 学校がひけると 家にいずらい子らが集まる場所は この公園しかない
大声を出して しゃべり 思いっきり戯れる
23時を回っても 帰宅の気配もない
近所からの 苦情はない
この公園から 彼らを追い出してしまったら
行く当てのない子が
夜の闇に紛れて 潜ってしまう危険性が あるからだ
だから 多少迷惑でも 地域は我慢する
衆人の中にいることが 彼らを護ることであることを
地域は 知っているからだ
秋深まった 肌寒い深夜のことだった
パトカーのサイレンが 鳴り響いた
公園にいた中学生が 一斉に逃げた
逃げ切れなかった数人が 捕まったようだ
仲間の誰かが たき火を始め 面白がって火を大きくした
危険を感じ 通報したのだろう
彼らは 自ら集う場所を失った
行く当てのない彼ら
これからは どこにたむろするのか
安全な拠り所を失ってはじめて
愚陋(ぐろう:おろかでいやしいこと)を学ぶ
初冬 夜のしじまに 公園は包まれていた
〔2019年9月2日書き下ろし。社会に背を向けながら反抗する思春期の中学生たち。その子らを見守る地域の人たち。痛みを持つ子らに添い続けている大人たちがいるかどうかが問われる現代社会の脆弱性〕