こぶとりじいさん

子どもたちに尋ねると
よく知ってる子 うす覚えに知ってる子 全く知らない子 
だから 福祉の授業は 難しい
でも よく取り上げる面白いお話 始めましょうね

「むかしむかし」
(で始めるルールに 必ず則らなければならない)
「あるところに」
(場所を特定すると その土地の民話となり 全国に広がらないのです)
「いいじいさんと意地悪なじいさんが ご近所で住んでいました」
(この善悪という設定が先にきて 先入観を植え付けるところに注視)
(なぜか悪い人は必ず罰を受けるという 勧善懲悪の教えを施すための仕掛けです)
「いいじいさんは 山に行ったら突然雨に降られて 近くの洞窟で雨宿り」
(気象予報のなかった時代 今まで体験しなかったような土砂降りの雨に遭遇)
「そこににぎやかな声とともに どやどやと大ぜいの鬼たちが入ってきました」
(歩いて行ける山の中 鬼たちがいるって噂知らなかったの?)
(だって 里から近いところで こんなに鬼がいるのも知らずに 暮らしていたっておかしいよね)
(それにだよ 鬼ってどうやって生計立てていたんだい?)
「それはさておき」
(いやいや 子どもはだませない)
「そこんところはなかったことにして じいさんは隠れました」
「鬼たちは すぐに宴会を始めました」

(鬼って自前で酒造りしていたの この洞窟は密造酒の酒蔵? そうでなかったら里から盗んでくるしかないでしょ 集団窃盗事件が世間の口にのぼらぬことなんて考えられない)
「いやいや そうではなくで それもなかったことにして」
「それを隠れて見ていたじいさんは 鬼たちの陽気さに誘い出されて飛び出した!」

(危ないっしょ 何されるかわかんないもの)
「それでも飛び出したんで 鬼もびっくり! 今までの宴会に人間と飲んで騒いだことは一度もなかったから 面白いことやって見せてとリクエスト」
(じいさんが別に危害を加えるわけじゃないから この雰囲気を壊さなければ害はなしという 鬼さんたちの瞬時の判断は正しかったね)
「じいさんは酔わないとできないから その前にお酒を飲ましてとお願いしました」
(ちょっと待ってよ このじいさん実はすごいお酒好きかも お酒に釣られて我を忘れ飛び出したと解釈できない いやきっとそうだよ)
「はいはい そういうことにしておいて じいさんは 酔いが回るにつれ 愉快になって歌うや踊るの独断場 鬼たちはすっかり喜んでハイテンション じいさんに振る舞い酒をたっぷり飲ましました」
「鬼たちは 今まで味わったことのない 演芸の面白さを知ったのでした」
(芸達者なじいさんだったという次第 芸は身を助けるとはよく言ったものです)
「じいさん 実におもしろかった なにか願い事があれば何でも叶えてやろう」
(普通なら金銀財宝を求めるところ このじいさん金には無頓着だったようです)
(芸人さん 今のご時世ずいぶん儲けていらっしゃる人気者がテレビ番組を独占して ちっとも面白くなくなりました 欲深になってはいけないよという教訓話?)
「実は 一番の悩みの種が ほっぺたのたんこぶ ぜひとってくれませんか」
(じいさん こぶが嫌で嫌でずっと劣等感を抱いて生きてきたんだね)
(そこで美容整形医の術を持つ鬼さん登場 見事こぶをきれいに切除したんだ)
(日本の美容整形の走りだったんだね 知ってた?)
(じいさんの回復力のスピードにも 驚くばかり)
(だから入院しても さっさと追い出されれるのか 納得!)
「じいさんは 雨上がりの山道を踊るように駆け下り 里に戻ったのでした」
(その歓びようは半端なかったと 里の人も驚いたという証言を得ている) 
「その話を聞いた意地悪じいさん その洞窟の場所を聞き出して 山さ入ったのでした」
(実はこのじいさんもこぶをほっぺにつけていて 劣等感にさいなまれていたのです)
「じいさんは洞窟に隠れて 鬼が戻ってくるのをじっと待っていました」
(ドキドキしながら 怖いから全身ブルブル振るわせて 隠れていたのだと想像します)
「鬼たちが戻ってきて酒盛りが始まり 宴も盛り上がったところで じいさん震えながら登場 鬼たちはたいして驚きもせず さっそく芸を所望しました」
「じいさんは 頑張って 頑張って 歌ったり踊ったりしたのですが 見るに堪えない下手くそで 鬼たちはすっかり酒の酔いが覚め 怒ってしまいました」

(完全に スベってしまったのです)
(鬼たちは せっかくの楽しい宴会を台無しにされたと怒り心頭 さあ大変!)
「おい このクソじじい!」
(怒りの発語と ご理解を)
「このじいさんに あの愉快なじいさんからとったこぶをつけてやれ!」

「結局意地悪じいさんは 2つのこぶをつけて 泣く泣く里に下りてきたのでした」
(殺されないでよかったと胸をなでながら です)
「おしまい おしまい」

ここで 「うさぎとかめ」の おさなご再登場
「おじいさんは自分もこぶを取ってもらいたいと思って 危ない目に合うかも知れないのに勇気を振り絞って 鬼に会いにいっただけなのに どうしてこんな悲しい目にあってしまったの
それに どうして意地悪なおじいさんっていわれているの わかんない」 

さて あなたなら どう考えますか?
お話が長くなりましたので 続きは来週
ではまた NHK朝ドラ「なつぞら」風に
「なつよ アニメーションに できるかな えっもう最終週!」  

(広瀬すずのファンになった シニア層の嘆きの声 聞こえますか)

※勧善懲悪(かんぜんちょうあく):良いことをするようにすすめ、悪いことを懲らしめやらないようにさせること。

〔2019年9月11日書き下ろし。善悪、敵味方など二極化することでレッテル貼りをするご時世、このお伽草子から何を学ぶのか。見えるこぶ(問題)をただ取るのではなく、深いところの問題に感じる力をつけなければならない。第4次安倍再改造内閣の発表の日にあたって、どんなこぶをつけられるのか気にかかる〕