スクハラ

快感
そうつぶやいた
快感
自分が思うように 子どもを操る
快感
嫌いな奴は 指導で潰す
快感
あのおびえた目が なんともいえない

なぜ?
生意気な奴をとっちめるのは 痛快
嫌いなタイプって 許せないよね(笑)
ストレス解消 憂さ晴らし
偉そうに聞いてるあんたも どっかでしてるだろう

後ろめたい?
そんなのあったら やんないよ
性格の悪い奴 成績の悪い奴 親に問題ある奴
そいつらを指導するって 手間がかかること 知ってて 聞いてんのかい
こっちには 生徒指導という お墨付きがあるんだよ
正々堂々と いいわけできるから 大丈夫さ
それに クラスの子どもらを味方にしとけば 怖いものなし

先生なんだ?
そうだけど なにか
文句があれば どうぞ
いい加減な奴の言い分を 誰が本気で聞いてくれる?
子どもをかばうなんて 面倒くさくて誰もしない
学校の中のコトって なかなか ばれっこない
なぜって 
事なかれ主義で 触(さわ)りたくもないし 関わりたくもない
ばれたら みっともないから かばうしかないけど
子どもなんか 三年もすれば卒業するから オシマイ
親の文句も 聞き流すくらいの度量がなければ やってられないしょ

子どもファースト?
冗談じゃない そんな子を相手にする 教師のしんどさわかるかい
忙しくて大変な仕事だってことぐらい 知ってるだろう
お守りをしてるわけじゃない
指導の結果が 求められているんだよ
だから 奴らになめられないように 厳しくしてるだけ
そんなの どこでも普通にやってることだろう
やり方は 学校それぞれだろうけど 
今まで 誰にも文句は言われなかった
校長にも 特に指導されたこともない
任せられたんだから そりゃそうだろう
まあ指導の中身は 詳しく知らずに
校長室に でんと収まってはいるけどね

でも 快感って 異常
おいおい 喧嘩売ってんのかい
ふざけるんじゃないよ
おれは 当たり前に仕事してるだけ
快感と言ったのは ことばの綾(あや)
そんなこと いいふらすなよ

面と向かって 本音を吐くわけはない
絶対 さとられてはいけないこと
弱い立場の子どもをいじめる 
陰湿な言動を 自制できない 反面教師
教師でいる限り ばれない限り
生徒指導という 聖域の中で繰り返される
スクール・ハラスメント
しっかりと「悪質な教師のいじめ」と訳そう

心閉ざして 訴えることもできずに 
自死した子も 未遂した子もいた
怯(おび)える子に我慢を強いて 快感を楽しむ
教師の皮を被った輩を 決して許してはならない
子どもの成長を歪め 人権侵害を容認してきた 同僚たちも 
学校の閉鎖性の問題は 
子どもが 意図的に排除されていることにある

〔2019年9月23日書き下ろし。生徒指導と偽っていじめを平然と繰り返す教員。子どもの深刻な事態を軽視している教員集団。教員のことばの暴力を、決して野放しにしてはならない〕

付記
スクハラ、相談できる場を 不登校経験もつ大学生、署名活動
教員らによる嫌がらせや暴言などを「スクール・ハラスメント」や「学校被害」といった言葉で捉え、改善を訴える動きが出てきている。今夏は、中学の担任からの暴言で不登校となった大学生が署名活動を行った。「被害に遭った時に、相談し、解決できる仕組みがほしい」と訴える。
「こんなにも署名が集まるとは思っていなかった」
今月2日、早稲田大2年の佐藤悠司さん(20)は文部科学省内で会見を開き、そう話した。
佐藤さんは7月17日~8月17日、インターネットサイト「change.org」で、「スクール・ハラスメント(スクハラ)」に苦しむ小中高校生が相談できる窓口の設置を求め、署名活動を行った。集まった署名は約9千筆に達した。
佐藤さんによると、東京都世田谷区の私立中高一貫校に通っていた中2の冬、担任から「お前は離婚家庭の子どもだからだめなんだ」などと長時間にわたり叱責(しっせき)され、「いかに人間としてだめなのかを言い続けられた」と言う。2年の終わりまでは何とか学校に通ったが、春休みを経た中3の4月から、学校に行こうとすると気分が悪くなり、腹痛に襲われた。不登校になった。その後、3度にわたって退学を勧められ、睡眠障害にも悩まされた。
「最初は、家族も『先生がそんなこと言うわけない』と取り合ってくれなかった」と佐藤さん。都や区に相談したが、「私学を指導する権限はない」と言われた。当事者が先生からのハラスメントを相談できる、独立した行政機関の窓口がほしい――。そう考え、署名を始めた。署名には、100人以上からコメントが寄せられた。「多くの行き過ぎた指導が、自覚無く行われているのが問題」「私も現在、教師からハラスメントを受けている」「教師から屈辱的な対応をされ、負の記憶として残っている」……。
ハラスメント被害を尋ねるアンケートも行い、59人が回答。85%が学年主任らへ相談したが、4割超が「効果がなかった」と答えた。3割超は「かえって状況が悪化した」とした。
署名は文科省と東京都、世田谷区に提出した。佐藤さんは「多くの人が悩んでいると知った。ハラスメントの証拠は得にくく、泣き寝入りせざるをえない人が多いのではないか。解決に向けて動ける機関を設置してほしい」と訴えた。(朝日新聞デジタル2019年9月23日朝刊)