本をつくる なんとこころ躍る 楽しきことか
本をつくる なんとこころ動く 嬉しいことか
本をつくる なんとこころ弾む 愉快なことか
本をつくる なんとこころ昂(たか)まる 熱きことか
本をかく こころを澄まし 声を聴く
本をかく 目を凝らし 丹念に行間を読む
本をかく 頭をフルに働かし イメージを膨らませる
本をかく 手渡すときの喜ぶ顔が 創作のエネルギー源
三日前 外堀を埋めた
印刷業者との 綿密な打ち合わせ
表紙・裏表紙のデザインの提案 プロの手直しに期待大
中表紙の色紙は 師直筆の書
カラー写真の特別ページ 紙質が光沢紙になり 値段も上がる
装丁の仕様 ちょっとお洒落に ハードカバーはパス
紙質 反射の少ない紙色
そして印刷部数
大枠決まり 原稿持ち込みでの印刷製本
提示価格は 予想より安価だ
個人負担の非売品だけに 価格は重要ポイント
安堵する
納品期日を決めた
そこから遡(さかのぼ)って 印刷作業 二校 初校 原稿締め切り
スケジュールが 決まった
だから 二人は逃げられなくなった
もう書くしかないと追い詰めて 腹をくくってやるしかない
恩師の自分史を インタビューをしながらしたためる
福祉に一生を奉じた 八十年の人生を
大切な人との出会いを「ひと物語」で紡ぐ 二人旅
旅の終着駅にたどり着くまで 楽しい豊穣の時を過ごしたい
いまようやく 二十八歳の新婚時代を書き終えた
書名『邂逅』(かいこう)
師のおもいを書き残したいという 強い衝動から
最初に 思い浮かんだことば
わたしもまた 師に生かされていると 知らしめることば
師の寛容なこころに 抱かれて
その恩情への せめてもの感謝を 拙(つたな)いことばでしるす
それがいま 私に託された 至福の喜び
本をつくる このワクワク感が 二人にはたまらない
〔2019年10月19日書き下ろし。無条件に人を信じる。ただそれだけ。その人たちとの『邂逅』こそ、私の人生の至宝である〕