歌う
こころを 思いっきり 開放する
声を張り上げ 怒鳴るように 歌詞を放つ
音程も バラバラ
だから 面白いハーモニーが そこに生まれる
3歳児も 4歳児も 歌うことを全身で楽しむ
演じる
台詞を忘れないよう 早口で話してホッとする
でも忘れてしまった子は 隣の子が耳打ちして
自信なげに 目配せしながら 台詞を吐く
一人ひとりが 親には主役
3歳児も 4歳児も 演じることを全身で愉しむ
ゼロ歳児のお披露目
名前を呼ばれて 反応する子に 大きな拍手
大勢の観客を前にしても ぐずりもせず泣きもせず 席に座っている
遠目で小さい仕草に一喜一憂する観客 ただそれだけのこと
手遊び唄が流れても 観客を見ている つぶらな瞳
誰かを探しているのだろうか
小柄な母は 背伸びを精一杯して ゼロ歳児に手を振る
乳飲み子は 気づくはずはない
それでも ここにいるよって 手を振りたい
母はいつでも そばにいたい
その成長を見ていたい
でも預けるしかなかった乳飲み子は
いま舞台の上で 保育士たちに見守られながら そこにいる
他人に預けた子が こうして舞台でおりこうさんに座っている
ちょっぴりの寂しさと ここまで育っている喜びが
複雑にシャッフルされた 感情のわき出るなかで
小柄な母は 背伸びしながら 無心に手を振る
手を振りながら 笑顔を見せながら
歌い踊る我が子に
声援の手を振る 母さんたち
後ろには ビデオやスマホで撮る父さんらが立ち並ぶ
我が子が一番 お目当ては逃さぬよう 真剣だ
演目の終わりは お決まりの出演者総出の記念写真
舞台の上には 母親たちの手作りの可愛い衣裳で並ぶ子ら
拍手喝采 幕が閉まる
年に一度の晴れ舞台
子らにどんな演目を どう演出するのか 評価される保育士たちの心意気
日ごろの保育時間以外で 周到な準備をした保育士の心意気
そこにあるのは 日ごろの指導の成果の発表会
そのご苦労は きっと報われていた
子らの 1年の成長の早さに 圧倒されながら
子の成長の喜びと 保育士への感謝の 特別な時間が 終わった
保育所は 預けるところではない
親と保育士が 共に保育する場であることを
確かめ合う舞台となった
〔2019年11月10日書き下ろし。2年ぶりに保育園でゼロ歳、3歳児、4歳児の生活発表会を観た。2歳児と年長さんは観られなかった。それでも幼児と保育士たちの奮闘ぶりに心は熱かった〕