鼻持ちならない人も いた
でも このマチの人は 違った
心底 このマチが 好きだった
ここで暮らす人が 好きだった
はなっから 断ることはできなかった
縁もゆかりもないマチに 居住まいして
心のままに 日を浴び 風を受け 雨に打たれた
そして 人情の機微に触れた
隣人は 体調を崩し 体力にも自信がなくなった
町内をまたいだ 心配事の御用聞きも できなくなった
老いゆく隣人は 車の運転免許を返上した
お願い 私の代わりに 民生委員引き受けていただけない
頼みは 唐突だった
それだけ 切羽詰まっていたのだろう
長い間 このマチの弱った人たちに添い 尽くしてきた人
その姿を 身近に見てきた
その苦労も よく知っている
だから 快く引き受けよう
そう思う心に 素直に従った
ありがとう
あたたかい手を握られた
この人のこころのぬくもりが 感じられた
この人のような 求められる人になれるだろうか
不安げな表情を 見逃さなかった
大丈夫 あなたが一人前になるまで きっちり面倒みるから
ホッとした
お世話になった恩返しの機会を いただいた
何もわからぬままに 明日からすぐできる仕事ではない
導いていただくことが なによりだった
たくさんの教えと 人に寄り添うことから
私もここで 地の人として成長しよう
私の人生の棚卸しは あなたがいて ここから始まる
〔2019年11月14日書き下ろし。12月民生委員児童委員の改選。新任の人たちが不安な気持ちで臨む。先日の研修会で新任を支える人が必要だと二期目の委員が訴えている〕