ひと儲け

3年目 ボランティアセンター
名ばかりになってしまった部署にいた
配置されたときに
心躍った
でも すぐに折れそうになった

ボランティアの振興
福祉教育の推進
あてがい扶持の 衰退事業
ただ 上司に言われたまま こなすだけで良かった
異を唱えても 上司は真剣に取り合ってはくれない
仕事への憧れは いつの間にか しぼんでいった
意欲も気力も しぼんでいった
こんなものかと あきらめることが 保身となった

なぜボランティアなのか
なぜ福祉教育なのか
名ばかりの推進会議も 踊っていた
肩書きで語る先生方のご意見を 
拝聴するだけで 仕事は終わった
後は上司から 指示を待てばいい

3年目 何もしてない
そろそろ 自分にあきがきた
我慢の 限界が見えてきた
ミッションとモチベーションの失せた組織
民間企業なら 遠の昔に倒産するも おかしくない
社会福祉を担う看板は ほこりまみれになっていた
青春の刻は
抗うことも出来ず 
残酷にいのちの時間を削る 

疲れた 
何も考えたくない
思考停止の赤信号
無気力感が こころを支配する   
そのまま受け入れて 楽に生きたら
怠惰への 誘惑のつぶやき
虚しく こころを支配する

福祉教育の 衰退期のいましか知らない
だから こんなもんだと思っていた
ボラセンが輝いていた時代 
真剣に取り組んだ 先駆者たちの生の声を聴いた

その時 みんな躍動していた
教育的価値と実践の豊かさを 熱く論じ合った
異業種の先駆者たちを束ねる先輩も 思う存分力を注いだ
そこには 福祉教育のミッションが 明確に示されていた
だから 福祉教育への展望と希望が 共有された
ここに 先駆者の叡智が 結集された 
そして 先駆者たちは 自ら動いた
それは 地域に 学校に 大きな影響力を及ぼした

先駆者が イニシアティブを取った 
やっかみとしみったれた抵抗感
保身に走るつまらぬ面子の感情論 
社会的使命感に乏しい建前論 
推進の目的を置き去りにして  
福祉教育の根は いつしか断たれ 
社会的な問題も 露見し批判され 
組織の信頼性は 揺らぎ失い 
有能な人材は 失望し去った
それが 伝えられた事実
いまのいままで 
衰退の一因が 組織だったと知らなかった

子どもたちの人として育ち行く道を 閉ざしてはならない
福祉教育は 学ばねばならぬ人の道
その覚悟を持って 福祉教育の振興に生きてほしい
あなたがいて ひとがあつまり ひとは育てられ育っていく
そんなあなたなら 誰かがきっと手をのばしてくるはず 
「ひと儲け」こそが 3年目のあなたのテーマです

〔2019年11月25日書き下ろし。社協や施設で福祉を学び育てられた。推進機関が衰退していくことへの悲哀を語るよりも、そこで頑張る人を応援してほしいと切望した〕