拿捕(だほ)

1月15日 根室市にいた
人口2万4千人弱の国境の町
ピーク時の半分になっていた
この町で 200人のベトナム人が 水産業に従事する
外国人労働者として 期待されている
石垣雅敏市長は 福祉への参入も構想しながら
市内の企業関係者と共に
ベトナムの各都市を 訪問していた

最盛期の活気は失ったと 地元民はつぶやく
それでもなお国境の町は 漁業が基幹産業なのだ     
それを支える人材は 
はるばる南国ベトナムから やって来た
しばれたマチで 水産業に従事する
その待遇が 正当に評価されてこそ
外国人は 集ってくる
彼らの理解と 彼らとの共生が 
市民に問われる町でもあり 未来でもある

15日午後 拿捕(だほ)された
歯舞漁港所属の マダラ底はえ縄漁船「第68翔洋丸」(29トン)
ロシア国境警備局の臨検を受け 国後島古釜布に連行された
日ロ双方の水域内での操業条件を決める日ロ漁業委員会を受け
1月から 北方4島周辺のロシアが主張する200海里内で操業していた
嫌疑は 船倉にあったアブラガレイの頭部が切られていたこと
マダラ漁で カレイの漁獲も認められていた
でも 1月からの日ロの新ルールの厳格化で 頭を落とした魚は積載できない
頭を切り落とすのは 加工したと見なされた
漁師たちは そんなルールは聞いていないと反論している

暮れにも 安全操業のタコ空釣り縄漁の漁船5隻が 拿捕された
タコの重量の記載が過小だったと クレームをつけられた
1100万円の罰金を支払い 放免された
儲けは飛んで 厳しい正月を迎えたことだろう
市長は容認できぬと 国に強力な漁協外交を求めている
安全操業は 日ロの協定に基づき 管轄権には触れておらず
政府はロシアに 拿捕や罰金は認められずと抗議している
その抗議 何の効果もなく 
15日 また拿捕が起こる

ロシアは 自国の法を厳格に運用したと 主張する
プーチン政権の 外交・内政に関わることで
過去にも 拿捕という常套手段を使って 実効支配を強調し
北方領土は自国だと 国民にアピールしてきた
関係者は 安全操業を続けるために
漁業者に よりいっそうの警戒を呼びかける 

これからも ロシアは強行に出てきます
糠に釘打つ 無力な外交 続きます 
ロシアとの領土交渉
友だちごっこで 期待させ気を持たせて 
待たせたあげくの果ての頓挫です
日米の安保条約が足かせだと ロシアの主張は建前で
本音は透けて見え見え 返すつもりは鼻からない

厳寒の国境の海で働く漁師たち
厳しいルールと労働環境の中
今日も 船を繰り出して
北方領土の問題と安全操業を 国民に訴え続けます

拿捕の翌夜 東京都内の日本料理店
有名芸能人と 嬉しそうに宴に興じる御仁
プーチンさんとの 次の会食機会がもしあるのなら
国境の海で採れた 根室のタコのしゃぶしゃぶを 一度ご賞味ください
舌鼓を打つプーチンさん 
なおさら北方領土はロシアだと 主張することでしょう

〔2020年1月17日書き下ろし。16日根室で出会った人たちからロシアの拿捕の意図を聞かされ、国境の海で生きる漁師たちの厳しさを思い知らされた〕