雪の朝の訪問者

雪降る朝
キレンジャクが 十数羽群れて舞った
頭部の短い冠羽(かんう)は 風に小さく揺らぎ 
尾の先の黄色のラインが 認識票だった
向かえの庭の木の 小枝に残る赤い実に
とりついてついばむ 可愛い姿
スズメ大の 茶系色の丸っこい姿
冠羽の下は 歌舞伎の隈取りしたような 精悍な目

ここに住まいして30年近く
初めて訪れた 冬の贈り物
妻と二人 室内からのバードウオッチングと洒落込んだ
国道12号線を走る車の音は 消された
街中に生まれた静寂な世界は
キレンジャクの突然の飛来で 別世界へと誘(いざな)い 
冬景色に趣(おもむき)を添え 一体化していった

札幌は 今冬初めての大雪の朝 
昨夜戻った長旅での疲れた身体を
いともたやすく 癒やしてくれたキレンジャク
雪の降りが強くなったその瞬間 
一斉に枝を離れ 放物線を描くように
群れて 雪空に消えていった
つかの間の 感傷に浸りながら
穏やかなこころ模様に 不思議を覚えた

〔2020年2月6日書き下ろし。自然の予期せぬ贈り物。厳寒の地で生きる小鳥たちの姿にこころ惹かれた〕