闇鍋

魚のあらは 冬の鍋には欠かせない
身も骨も内臓も 野菜と炊き合わせた ごった煮
三平汁が 大好きだ
シャケのあらを 存分に入れて
大根 ジャガイモ ニンジン 豆腐も入れておこう
おっと長ネギは 忘れてはならない
塩味だから 野菜の甘みも充分堪能できる
一日おくと 汁のしみた大根の味と食感はたまらない
あらは骨とひれ以外 なめるようにして身をほどく

今冬も 内閣という魚のあらを 国会という大鍋で炊いている
材料は いままで 冷凍保存していたあらを解凍した
身の削がれたあらは 腐敗したまま 瞬間冷凍された
だから 鍋の中は 腐敗臭が充満し 鼻をつまむしかない

勇気ある官僚は それを食する
悪しき出世ゲームは うまいと言わねば 左遷の憂き目
身近に数年見てきただけに 我先にと パフォーマンスを繰り返す
まずいといった瞬間に 言い間違えましたと即訂正
あり得ないコトバも態度も 鍋奉行の顔色次第で踊らされる

あら探す輩は 鍋の中 もたもたとひっかけまわす
食(しょく)せぬあらしかないのに 身を探す
鍋奉行 さらに面白がって不気味なあらを足してゆく
鍋奉行 ようやく鍋に飽きが来た
鍋奉行 世の中騒がす 新型肺炎流行の感染予防も鍋に足し
あとはよきに計らえと お友だち誘って美味しい店で舌鼓

あら探す輩の前に 出された新たな鍋ひとつ
得体の知れぬ その鍋は
いまの不信なご治世炊きあげた 闇鍋(やみなべ)だった  
いまの不安なご時世炊きあげた 闇鍋だった

民は 闇鍋の不気味さを 感じ始めた
民は 闇鍋には 決して手は出したくなかった
民が 闇鍋の鍋奉行の差配を 拒む日は近くなっていく 

〔2020年2月26日書き下ろし。死後ウイルスに感染していたと報道された。道内の感染地帯が闇鍋のように不気味に広がる〕