逃れるつもりだ

あんなこと 言ってしまった
いまさら 桜のように「な~しよ」って
そんなわけには いかなくなった
引っ込みつかない どうしよう?

対策委員会 集めただけで
たいした対策あるわけでもなし
いい加減に 打開策出せよって
本音は いらいらしてたんだ
だから夜は 友だちとだべって ストレス解消
それがお気に召さないようですが 何か?

でも なんか周りが深刻ぶってきた
北海道で 知事が対策なしで休校をぶち上げた
おいおい 若いのよくやった
これで空気の流れが 変わってきたぞ
基本方針 そっちのけ
前のめりで 全国の臨時休校決めちゃった
千三百万人の子どもの居場所考えず
さてこの始末 誰かにさせれば事は済む
あとは 責任逃れる準備をすればいい

周りから会見せよと せっつかれ 
やってもやらなくても どうせ好き勝手に言われるがおち
側近たちに 適当にあしらう算段立てるよう指示をした
あいつらは ほんとにずる賢い
大して中身のない対策を これだけの原稿に仕立て直した

えっ ちゃんとテレビカメラを見て 国民に訴えるようにゆっくりと
わかった わかっているよ
ようは 神妙に国民の心に伝わるように語りかけることだろう
なに演説とは違うって わかってるよ
空気ぐらいは読めるよ 俺だって
国会での 小馬鹿にした振る舞い禁止です
緊急事態のような顔をして
トーンを落として語りかけ カメラ目線を外さずに
うん~ こんか感じでいいか
リハーサルはバッチリ OK!

本番は うまくいったと自画自賛
代表質問のみの 前さばき 
事前のシナリオ通りの記者対応で 事進む
彼らこそ 俺の大事なスポークスマン
マスコミは 言ったことだけ記録する
それならコピー渡すだけで 会見必要ありません
でも カタチだけでもしておかなければ 支持率上がらない 
ただそれだけの会見です
追加の質問? 
何もないのに 答えられるわけがない
休校の科学的根拠なんか 何にもない
そんなこと一言でも漏らしたら 万事休す
休業補償の話と人が集まるイベントの開催の自重を促すだけで
国民への説明責任 無事クリア
かったるい 土曜の夜が更けました

ホッとしながら 官邸に戻ります
この程度のことならば 早めに手を打ってもよかったな
台湾の情報戦略見事だな
オードリー・タンのような人がいれば とつくづく思う
この内閣の面々を見てごらん
そこまで考えているやつなんぞ ひとりもいない
足を引っ張るばかりで ガラクタの寄せ集め
イエスマンばかりの閣僚・官僚
だからひとりで決めて 後始末は官僚たちがやる仕事
それはそうだよ 彼らが仕えるのは国民ではない
長年培った尻ぬぐいは お手の物
いままでも 役職賭けたチキンレースを見てきたでしょ
だから安心して 会見の場に臨んだというわけさ
国民を黙らせて騙すぐらい どうってことはない

時間稼ぎをした
官僚たちも これでエンジンかかって
予備費2700億円で 対策案を立ててくれることだろう
果報は寝て待て
予算委員会の 野党の追及かわすのはいつものこと
ウイルスなんかに 負けてたまるか
この座は 誰にも渡さない
「逃れるつもりはありません」と 啖呵は切ったが
「逃れるつもり」で会見したって 見破られた?
ホント!

〔2020年3月2日書き下ろし。記者会見のあの気色悪さがいまも残っています。切り札切ったけど、台湾の感染対策見習って早めに動けば、この失態見なくて済んだ画面です。今日の参議院予算委員会のドタバタ劇、どうにかしてほしい〕
 
付記
「新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾」
…“神対応”を連発する蔡政権のなかで、世界から注目されているのがデジタル担当政務委員(大臣に相当)のオードリー・タン(唐鳳)氏だ。…タン氏はIQ180ともいわれる天才で、台湾の人々は「彼女の存在は私たちの希望」と慕う。
…日本と同じく台湾でも、1月後半からマスクの在庫不足が問題になっていた。まずは輸出や持ち出し、転売が禁止され、2月6日にはマスクの購入が実名制になり、7日間で2枚しか買えないようにした。厳しい供給規制に反発がおきる可能性もあったが、タン氏は衛生福利部(保健省)中央健康保険署と協力して、台湾国内の薬局にあるマスクの在庫データをインターネット上に公開。すると、民間のITエンジニアがそのデータを地図上に落とし込み、在庫状況がひと目でわかるアプリを開発して無償配布した。
それだけではない。緊急時に発生するデマ情報の拡散を防ぐため、ラインなどの通信アプリを通じて間違った情報を信じないよう注意するメールを配信。また、新型コロナウイルスに感染しやすいタクシー運転手やバス運転手にマスクが優先的に届くように求める情報を発信すると、フェイスブック上では、本当に必要な人にマスクを譲ろうという声があふれた。台湾の新型コロナウイルス発生状況のホームページはグラフや地図を効果的に使用していて、どの地域にどれくらいの感染者が出たかわかりやすい。台湾にも寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客については、下船してから訪れた場所をすべて公開した。こういったテクノロジーを使用した危機管理に、米国をはじめ世界から注目が集まっている。
タン氏にインタビューした経験がある台湾在住のノンフィクションライターの近藤弥生子は、こう話す。「両親の職業がジャーナリストということもあり、彼女は『情報』が人々にどのような影響を与えるかをとても理解しています。一方で、現役の閣僚でありながらも特定の政治的立場に立つのではなく、むしろ意見の対立をIT技術で可視化して、解決につなげることを考えている。入閣した時に『公僕の中の公僕になる』と宣言したとおり、特定団体の利益のために動くのではなく、テクノロジーを駆使して台湾の人々と行政院をつなぐ“パイプ”になっています」
台湾に防疫や衛生管理を根付かせて伝染病の撲滅に貢献したのは、日本統治時代の1898年に台湾総督府で民生長官を務めた医師出身の後藤新平だ。それから120年以上がたった今、立場は逆転した。日本は、感染症の流行対策について台湾に学ばなければならない。
(AERA dot.2020年2月29日/編集部・西岡千史)