北見芸術文化ホールの舞台には
講演スタイルの設定で ステージ中央には大きな演台が置かれた
観客は 新任の民生委員児童委員162名
420名収容のホールは 半数も埋まっていなかった
開始早々 突然3人が指名され 舞台に上げられた
導入は 寸劇から始まった
「稼いで半人前」
初めて見るシナリオ
母と息子とその妻
民生委員を頼まれて 引き受けざるを得ない葛藤を
家族との会話の中で 浮き上がらせた
今日の研修は 不安を持って臨む委員の多くが
自分なりに 納得のいく理由を探しに来ていた
だから 息子と妻の不安は 共感をもって受けとめられた
見事に演じきった3人に 大きな拍手が起こった
会場の隙間は 観客の熱意で徐々に埋まっていく
詩の朗読も 参加者が次々と登壇する
ライトを浴びながら 臆することなく
初めて出会った詩を 優しく読み聞かせる
その初々しさに 拍手が一段と大きくなっていく
中央にあった大きな演台は いつの間にか舞台の隅に置かれた
舞台の中央には 参加者が堂々と座していた
時間の推移と共に 詩や寸劇に感情移入していく
舞台は 彼ら自身が創り上げていくステージへと 変化を遂げた
会場との一体化を目指した ワークショップの展開は
予想以上に 共感と好感をもって受け入れられた
そこは 彼らが創る学びの世界に変わっていった
自らの課題を 詩を通して明らかにしながら
今日までの迷いを払拭して
明日からの活動に 頑張れそうという決意を こころに刻む
ワークショップは 成長する
当初の目論見を捨て 参加者の動きに身を任せる
周到な準備の上での予想だにしない展開が 自らの殻を打ち破る
劇場型の可能性の高さは 委員の主体的な参加によって実証されていく
「捨てることと創ること」の真意を 心ゆくまで味わい学んだ
〔2020年3月27日書き下ろし。臨機応変に場を学びの空気に満たすことへの醍醐味を味わう。参加者からの評価は、仕事への責任と意欲をさらに喚起する〕
付記
「捨てることと創ること」
昨年12月民生委員児童委員の改選期、道民児連が主催した新任委員研修会。
プログラムのワークショップを担って、3月新コロナ感染予防で3カ所が中止になるまで1月から2月まで道内11カ所を巡った。
アンケート調査を実施、1201人から回答が寄せられた。
第1次分析を、今日終えた。第2次分析は、クロス集計をかけて傾向を詳しく調べる。
新任の活動へのモチベーションを、高めるために、委員活動や支援を受ける住民のこころの有り様を詩に描いた。その詩を核にしたワークショップを展開した。
詩を朗読したり、その詩を材料にグループで話し合ったり、寸劇を演じたりと、2時間の時間はあっという間に過ぎた。
しかし、グループワークを中心とした展開は、会場の条件で頓挫する。参加者数によってグループワークのできるフラットな会場が確保できず、劇場型ホールでやるしかない。会場で、2タイプが生じた。
アンケート調査から面白いデータが、集計されていた。
全体の評価は、良かったが54%、良かったに近い41.8%、低評価は4.3%。
形態別で見ると、764人参加したフラットな会場では、良かった52.5%、良かったに近い43.2%、低評価は4.3%と、遜色なかった。
311人が参加した劇場型を見ると、低評価は4.2%と基本的に変化はしない。でも 良かった57.6% 、良かったに近い38.3%と、良かったが5%上昇する。グループワークを前提にしたワークショップは、ここで見事に覆された。
さらに2カ所で実施した劇場型を、比較してみた。300名収容の北斗市総合文化センター(渡島会場)は、149人のうち良かった51%、良かったに近い43% 、低評価6%。であった。420名収容の北見芸術文化ホール(オホーツク会場)は、162人にうち良かった63.6%、良かったに近い34%、低評価2.5%。良かっただけを較べると12.5%の差があったことに驚いた。
渡島では、初めて劇場型を展開した。できるだけ参加型の内容を工夫したが、そこにはレジュメの内容を充分に消化しきれず、展開にも会場との一体感にも今ひとつ不満を持った。
ただ他のフラットの会場でも、レジュメ通りの展開はしなかった。それは地域性を考慮しながら、インパクトのある身近な問題を提起する導入段階を、特にワークショップへの期待感を抱かせるような工夫を凝らして、レジュメ以外の資料を用意し、いつも臨んだ。
2月中旬、オホーツクは10カ所目になっていた。最初から会場との一体感を作らなければならないと覚悟した。それは、参加者主体の舞台をつくるプロデュースでもあった。数値に表れた64%の高い満足度は、この場にいた新任委員のモチベーションを確実に高める舞台となったことは、否定できない。
いままでの方法を捨て、共に新たに創ること、改めて仕事の面白さと怖さを味わった。
※道民児連:公益財団法人北海道民生委員児童委員連盟。公益財団法人は全国に2つしかない。
※2タイプの合計が1075人と、回答数1201人より少ないのは、無回答を排除した実数で分析したこと結果である。