辞められない

欲をかいたばっかりに 引くに引けないとこにいた
欲を出した東京オリンピック開催で 優雅な退場を夢見てた
欲をかかねば いまごろは 事の成り行き見ていたものを
欲のお陰で 事の判断すぐできず 損な役回りと相成った 

あのとき辞めときゃよかったと いつもタイミングを逃してしまう
日米安保条約堅持と憲法改正 公約だと吹聴したがために
憲政に大きな汚点をつけたのが 事の始まり傲慢だった
森友事件で妻の名が出てきたときには 事の始末に冷や汗かいた
飛んでる妻をかばう お友だち内閣・官僚絶好調 
一人自死しようが その結束は揺るぎない
嘘を嘘で塗り固め 知らぬ存ぜぬと白を切る
火の粉をかぶった身代わりは 栄転させて恩返し
いつも持論を押し通し 身の潔白を主張する 

付けが回ってきた
いよいよどん詰まりのコロナ禍対策
予想だにしない感染拡大 慌てふためき判断遅滞の体たらく
国難生じて 小心者の打つ手は小出し
ウイルス相手に騙しはきかず その収束にあたるしかないと腹くくる
お友だち内閣は無能な集団と化し 役に立たずとようやく得心いった
少しましな取り巻き連中の言葉を真に受け 勝手に決めて号令一下
強いリーダー気取っても 家紋の知れたボンボン育ち
世間との暮らしのズレは 妻と同様致命的な修正不能
言うこと成すこと 顰蹙(ひんしゅく)を買うお粗末さ
自ら一度緩めた規制から 2週間後には都市部に広がる感染者

危機回避の手腕が問われるこの事態
このタイミングに颯爽(さっそう)と 政治手腕の秀でた都知事がカムバック
見事にお株を奪われて イニシアチブを持って行かれた
苛立ち焦りながら仕立てた 準備不足の緊急事態宣言
諮問委員会の委員長を同席させた さもさもらしい記者会見
それも 先の一斉休校の独断専行の批判を回避しただけのこと
もっと深刻極まる発言
もしものことがあったなら 代理執行者は麻生太郎と名指しした
国難ではなく 亡国となる 

自己責任を回避する方法探って 判断保留
周りが催促する環境をつくり ズルズル延ばして時間を稼ぐ
都知事を牽制せんがためのタイムリミット
ようやく出した緊急事態宣言
それも名古屋を外し 8つの自治体に丸投げしたも同然で
1ヶ月後にどんな成果が出るのかは 皆目わからない
ピークは まだまだこれからだろう

ただただ驚く執念は
昨日の衆議院運営委員会で飛び出した 
コロナ危機に乗じた 改憲による緊急事態条項創設への前向き発言
改憲にすり替えようとする輩に乗じて 本音を吐露する
終息後の改憲論に弾みをつけたと 改憲論者は意気上げる
目の前の国難に立ち向かうこのときに 改憲論は論外なり
日本の国難は コロナ禍以上にこの程度の〈ひと〉にあり

あのとき辞めときゃよかったと
途中で放り出せば 
後の世に無能な政治家だったと罵倒され
長期政権の傲(おご)った成れの果ての不始末と 歴史の評価が下される

あのとき辞めときゃよかったと
欲さえ欠かずにいたならば 
こんな心労味わう羽目にはならなかった
そのタイミングはすでにない
緊急事態宣言も アベノミクス頓挫して 経済回復望めぬいまは仕方ない
その先のV字回復ありえない

もしもコロナ禍対策失敗したら
やっぱりそんなもんだったと 
恨み辛みを一身に受け かばう者はなし
そう見たことかと 蜘蛛の子を散らすように離散する 
それが 政治家の政治家たる非情そのもの

もしもコロナ禍対策成功しても
経済復興無理ならば やっぱり恨み辛みを買うしかない
国を導くリーダーは 結局ただの人である
失政を見て見ぬふりなど もうできぬ
民の堪忍袋の緒が切れる前に 潔い退陣しか道はない

国難を乗り切るための方法は
まず自分が感染者かもしれないと 行動自粛をすること
密閉空間・密集場所・密接場面を 避けること
ともに痛みを分かち合い信じ合う 人としての寛容力もいま試される
そして 社会や人のために リスクを負いながらも
一生懸命働く人たちへのおもいに応えて
深い感謝の心と言葉を添えて 
いのちと暮らしが支えられていることを 伝え広げていくこと
社会を強くしていくのは 政治の力ではない
いつの世も 苦難に生きようとする生命力と生活力に溢れた
「民の力」を結集すること

一人ひとりの覚悟をもって
「民の力」を いまこそ子どもや若者らに伝えていかなければならない

〔2020年4月8日書き下ろし。いつも中途半端で懲りない政権。緊急事態宣言後の社会環境や感染予防対策の条件整備が気にかかる。北海道で海外からの帰国者の発症散見で第2波の恐れありといま報道される〕