独居の老男がいた
卒寿に近い 男だった
連れを亡くして もうかれ15年
子どもらも とうの昔に家を出て
年に数度の里帰りにしか 滅多に顔は合わせない
男は 年相応に患ってはいたが
独り暮らしは 気ままで性に合っていた
家事はそこそこ 間に合っていた
7年前に 子どもが心配するので免許証の更新は諦めた
いまじゃ三輪自転車で 散歩がてらに乗り回す
近所の人らは
たまに寄って声をかけてくれたり
余分に作ったから手伝ってと おすそ分けしてくれる
互いに干渉することもなく 気楽なつきあいも気に入っていた
一日でも長く 妻と二人で建てたこの家で 暮らしていたいだけだった
会話がなければ 老いるのが早いと
数年前から 民生委員に進められ
デイサービスに 週に2回通っている
介護度はまだ1だというと
周りはみんな元気だねと 感心される
先のことをくよくよ考えるより
いまを大事にすることが 長寿の秘訣
そして毎晩欠かせぬ晩酌 良薬口に甘し
男は悟る
自分の暮らしは100% 自力できるわけがない
だから 他人(ひと)の力や 公の支援を受けて
なんとか暮らしていけるだけ「
足腰が弱くなったとしても いまを支えてくれて
しばらくここで暮らしていける
これが仕合わせというものなのだと しみじみ思う
人の手借りず我慢して 意地を張って暮らした先に
突然倒れて 一致も察知もいかなくなったら
もう 周りは差し伸べる手立てがない
だからいま しっかりと支えてもらえるここで
暮らしていける喜びを 噛みしめながら
今朝も 無事に目覚める
コロナ禍対策108兆円は いま使うべき金
倒れし前に 万全の支援の体制取ることで
大事あるときの立ち直りは きっと早い
倒れし後に どんな支援も焼き石に水
後の祭りで 金も時間も手間も余計にかかる
小さなところは立ち直れず 再起不能と知るべし
倒れた後の始末の見せ金ひけらかしても 誰も信じず
安倍内閣・自民党 見限るタイミングを探るだけ
事の甚大さに 若手議員ようやく気づきあらがう
そうしなければ 次の議席はありえない
長老政治に 三行半を渡す覚悟ができたなら
懐柔されぬよう 名を公表して 動くべし
一時のパフォーマンスでは 次はないと腹くくろう
安倍一党が 徐々に崩れていくさまを 注視したい
ぺしゃった後の始末を吹聴する前に
いまぺしゃらぬように あらゆる手立てを講じるべし
〔2020年4月13日書き下ろし。経済のV字回復言う前に倒れぬよう手立てをつくすことこそ本分ではないのか。そもそもの起点がズレたまま。ようやく若手から赤に近いカードが出された〕