アフリカの危機

迫り来る恐怖に ただ身を震わせる
避けられぬ恐怖に ただ立ちすくむ
確かな恐怖に ただあっけにとられる
襲い狂う恐怖に ただ身を委ねる

なんの兆しもなく 静寂の闇をついて 
突然黒雲が湧き上がり
猛烈な風と雨のように コロナウイルスが舞った 
アフリカの大地に 染み渡るように
彼の地に生きる者たちを 情け容赦なく叩いた  

その風を
その雨を
凌(しの)ぐことはできなかった
生身を晒(さら)すしかなかった

高熱を出し 起き上がることは二度となかった
乳飲み子は 母の乳房にすがったまま 動かなかった
男は 大地に並べられた家族に 覆い被さっていた
村には 乾いた風が 枯れ草を巻いて吹くだけだった
 
町は すでに死に至っていた
市場の人混みは いつしか絶えていた
貧しき者たちの住み暮らす家々からは
強い死臭が 風に漂っていた 
道路には 自転車が乗り捨てられ 車は焼けていた
商店は 略奪の残骸だけが残されていた
行く当てもなく 夢遊病のように歩く女がいた
食べ物を探す 子どもがいた
新型コロナの危険を知らせる緊急ニュースが 
どこからともなく虚しく聞こえてくる

身を護るすべを持つ者たちだけが
したたかに生き残る
無防備な貧しき多くの者たちが
運命に身を任す
アフリカの大地が 新型コロナに冒されていく
いま 生の選別が始まる

〔2020年4月19日書き下ろし。貧富の格差がより鮮明になることに、無力感と罪悪感を痛く感じる〕

付記
アフリカ、コロナで30万人死亡の恐れ=国連委
[ヨハネスブルク/ワシントン 17日 ロイター] 国連アフリカ経済委員会(UNECA)は17日、アフリカで新型コロナウイルス感染により少なくとも30万人が死亡し、2900万人が極度の貧困に陥る恐れがあるとして、1000億ドルの支援を呼び掛けた。
アフリカ地域54カ国でこれまでに確認された新型ウイルス感染者数は2万人以下と、比較的抑制されている。ただ世界保健機関(WHO)は16日、アフリカ地域の新型ウイルス感染者数は向こう3─6カ月で1000万人に膨れ上がる恐れがあると警告した。
UNECAは報告書で、アフリカ各国政府が打ち出す感染拡大抑制に向けた措置について4段階のシナリオを想定。何も対策が講じられなかった場合、人口約13億人のアフリカ地域で、年内に12億人以上が感染、感染により330万人が死亡すると予想。各国が厳しい感染拡大抑制策を実施する最善のシナリオの下でも、1億2280万人が感染、230万人が入院、30万人が死亡するとした。
また、アフリカでは人口1人当たりの病床数が1.8床と少ないことも対応が難しくなる要因の1つとして挙げた。人口1人当たりの病床数は、例えばフランスでは5.98床となっている。ただアフリカでは人口の約60%が25歳以下と、若年層が多いことはプラスになるとした。
新型ウイルス感染拡大でアフリカ経済は最大で2.6%のマイナス成長に陥る恐れがある中、UNECAは感染拡大により、500万─2900万人が1日1.90ドル未満で生活する最貧困層に陥る可能性があるとしている。
国連のグテレス事務総長はこの日、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が開催したテレビ会議方式の会合で、アフリカ諸国は新型ウイルス感染拡大に対応するために2000億ドルを超える資金が必要になると指摘。世界の債権国に対し、最貧国だけでなくすべての途上国に債務の一時支払い停止を認めるよう呼び掛けた。(2020/4/18 REUTER 配信)