卒業式も終業式も なかった
新学期を迎えても
迎える子どもたちの姿は なかった
新1年生の教室の 入学祝の飾りも そのままだった
整然と机が並べられ ただそこにあるだけだった
黒板も汚されることもなく きれいなままだった
からっぽの教室の空気は 乾ききっていた
静まりかえった教室は 刻を止めていた
子どもらの喧騒が 懐かしかった
子どもらの笑顔は いまはなかった
子どもらの甲高い声も 聞こえてはこなかった
子どもらの学ぶ姿も 戯れる姿も そこにはなかった
子どものぬくもりのない からっぽの教室
子どもの明日を閉ざしたままの からっぽの教室
こどもの不安を閉じ込めたような からっぽの教室
教室から 13億人の子どもが消えた
世界中に広がった 新型コロナウイルスは
持てる者と持たざる者の
持てる国と持たざる国の
教育の格差を さらに広げた
13億人の子どもの 貧富の格差が
子どもの未来を 小さくしてゆく
からっぽの教室のまま
取り戻せぬ時間が 冷たく過ぎてゆく
〔2020年5月11日書き下ろし。ユネスコの発表では177カ国・地域で全世界の72%、約13億人の子どもたちが就学の機会を奪われている。経済的格差の及ぼす影響は日本だけではない。一日も早く学校に子どもたちの歓声が戻ってくることを〕