バイト漬け

高校に入ってから
平日3日 土日もシフトをもらい
月3万円ほどの バイト代を稼いだ
楽しみは バイトが終わってから
友だちと携帯でおしゃべりすること
バイト代は 携帯代で消えた
目的は 携帯で友だちと夜遅くまで
おしゃべりすること?
なんだか可笑しい

高校は バイトが禁止されていた
でも 隠れてやった
帰宅部だから 遊ぶ金がほしかった
親には バイトしてることは内緒だった
適当に遊んで 適当に成績も取る
親には 進学すると言ってあるから
それなりに 金の工面もするはず?
それなりの 大学に入れるだろう
なんだか可笑しい

夜22時までしか 働けなかった
2年間 毎日バイトした
母の稼ぎでは 高校止まりだ
懸命に 進学資金を貯める
母には これ以上負担をかけたくない
下にはまだ幼いきょうだいもいる
中学では 部活はできなかった
母がフルタイムで働いていた
だから 保育所の迎えがあった
高校では バイトの合間に 
仲のいい友だちとだべるのが 唯一の楽しみだった

コロナ禍が 生活を一変した
バイトも ままならなくなった
進学資金を貯める計画も 危うい
無理なら卒業後に バイト漬けになって
死に物狂いで 進学資金を貯めよう
1年延びても 夢はあきらめない
夢がなければ 青春はゼロになる
そう腹をくくる

〔2020年6月9日書き下ろし。困窮した生活の中でも夢を追いかける子どもたち。バイト漬けになりながら、人生を切り開こうとする子どもたち。そんな想像を巡らしながら、コロナでその夢が挫折することのないように祈りたい〕