まていに生きる

人との隔たりが 生まれた
行き交う道で 互いに気遣い距離を取る
人の輪は避けて 通り過ぎる

知人との挨拶も 
顔見知りの子らとの会話も
薄っぺらになりつつある

蕎麦屋に入って席に着く
ゆとりをもって 席を空ける
混み合う時間も 半数しか座れない

スーパーのレジに並ぶ足下に
1メートル間隔で ラインが引かれ
客は 静かに番を待つ

病院も店もどこでも 
無機質な透明のアクリル板が垂れ下がり
対面での会話は 事務的に取り交わされる

学校の教室は 席を離して授業を受ける
マスク越しだと しゃべりにくく 表情もよくわからない
給食の配膳も フェースガードで ものものしい

このままでは 人の暮らしの根が腐る
こんなときだからこそ
ぬくもりあって 気遣いあって
まていに人とつながりたい

このまま警戒する目がはびこると 社会が凍る
こんなときだからこそ
困ったことや心配事に 聴く耳持って 
まていに人とつながりたい

一つひとつのおこないを
ためらうことなく 
まていにする
そう生きる人が 世の救いです

※まていに:より丁寧に、心尽くす心構えやその態度。

〔2020年6月21日書き下ろし。すれ違う人たちの悪気のない距離間。店での警戒体制。コロナ禍での警戒意識がまだまだ続く。〈まていに〉生きるひとたちの存在が有難い〕