そうとおくないむかし あるところに
イエスマンがおりました
とても自分のことが大好きな
王さま気取りの男に 仕えていました
男は とても人の目を気にかけました
男は いつも人の悪口を気にかけました
男は しきりに人の評判を気にかけました
男は イエスマンを呼びつけました
「おい俺の評判はどうだ?」
「とても悪いです」
男は その言葉を聞くと
すぐに首にしました
男は 別のイエスマンを呼び出しました
「おい俺の評判はどうだ?」
「すこぶる完璧で非の打ちどころがないくらい…」
男は その言葉をさえぎり
すぐに首にしました
男は 別のイエスマンを呼び寄せました
「おい俺の評判はどうだ?」
「よろしいです」
男は 満足げにうなずきました
男は 単純に
「イエス」だけが聞きたかっただけなのです
男は 単純に
「イエス」と応じる者がいればよかっただけなのです
男は 単純に
「イエス」としか言わないイエスマンをそばに置いただけなのです
世の中に イエスマンがはびこりました
男は とても不安になりました
男は とても疑り深くなりました
男は 疑わしいみんなの首を…切りました
イエスとしか言えなかったイエスマンたちが
恐怖心を棄てて立ち上がり 男を葬りました
男は 最期に聞きました
「俺の評判は ほんとは悪かったのか?」
イエスマンだった者たちは一斉に
「イエス!」と 歓喜の声で叫びました
〔2020年7月10日書き下ろし。そこは中国、ロシア、米国、日本?でしょうか。イエスマンしか求めない者たちの凋落をかたく信じます。〕