「子どもを粗末にしない共育」
ひとつ
子どものいのちを 粗末にしないこと
ふたつ
子どものこころを 粗末にしないこと
みっつ
子どものまなびを 粗末にしないこと
三つの粗末にしないことを 心にとめると きっと
いま なにを 粗末にしてはならないのかが 見えてくる
どうして 粗末にできないのかが 分かってくる
いかに 粗末にしないよう 考える
あとは 一人ひとりの子どもに添って 動くだけ
それが 共育
「小さな音」
世界で一番小さな音って?
アリが餌を巣に運んでいるときに
餌が地面を擦る音
ミツバチがホバリングしながら
花の蜜を吸う音
朝露に濡れた葉の雫(しずく)が
花心に落下していく音
貧しさに囚われし子らの涙が
世の風に舞い 大地に浸みてゆく音
「晴れ舞台」
歌う
こころを 思いっきり 開放する
声を張り上げ 怒鳴るように 歌詞を放つ
音程も バラバラ
だから 面白いハーモニーが そこに生まれる
3歳児も 4歳児も 歌うことを全身で楽しむ
演じる
台詞を忘れないよう 早口で話してホッとする
でも忘れてしまった子は 隣の子が耳打ちして
自信なげに 目配せしながら 台詞を吐く
一人ひとりが 親には主役
3歳児も 4歳児も 演じることを全身で愉しむ
ゼロ歳児のお披露目
名前を呼ばれて 反応する子に 大きな拍手
大勢の観客を前にしても ぐずりもせず泣きもせず 席に座っている
遠目で小さい仕草に一喜一憂する観客 ただそれだけのこと
手遊び唄が流れても 観客を見ている つぶらな瞳
誰かを探しているのだろうか
母は ゼロ歳児に手を振る
乳飲み子は 気づくはずはない
それでも ここにいるよって 手を振りたい
母はいつでも そばにいたい
その成長を見ていたい
でも預けるしかなかった乳飲み子は
いま舞台の上で 保育士たちに見守られながら そこにいる
他人に預けた子が こうして舞台でおりこうさんに座っている
ちょっぴりの寂しさと ここまで育っている喜びが
複雑にシャッフルされた 感情のわき出るなかで
母は 無心に手を振った
手を振りながら 笑顔を見せながら
歌い踊る我が子に
声援の手を振る 母たち
後ろには ビデオやスマホで撮る父が立ち並ぶ
我が子が一番 お目当ては逃さぬよう 真剣だ
演目の終わりは お決まりの出演者総出の記念写真
舞台の上には 母親たちの手作りの可愛い衣裳で並ぶ子ら
拍手喝采 幕が閉まる
子らの 1年の成長の早さに 圧倒されながら
子の成長の喜びと 保育士への感謝の 特別な時間が 終わった
保育所は 預けるところではない
親と保育士が 共に保育する場であることを
確かめ合う舞台となっていた
「この子らに~2020年に願う」
この子らのつぶらな瞳が 曇らぬよう
世の中のあしきことを 吹き飛ばしたい
この子らのあふれる笑顔が 引きつらぬよう
世の中のあしき人を 改心させたい
この子らの育ちゆく道が 健やかなるよう
世の中のあしき心を 押しのけたい
この子らの夢ある未来が 揺らがぬよう
世の中のあしき仕組みを 変えていきたい
この子らが 生きる喜びを 豊かに感じるように
世の大人よ あしきものは 体を張って取り除こう
この子らが 生きる希望を 強く抱くように
世の大人よ 最善の努力を 惜しむことなかれ
ハグしてくれる子らの無垢なこころにうつる 世の正義が問われている
ハグしてくれる子らの澄んだ瞳にうつる 己の人生が問われている
この子らは 世の光 人類の希望 宇宙の一命
この子らこそは すべての大人が生きる存在理由
新しい年は この子らのためにあってほしい
新しい年に まだ生きながらえる者たちよ
いのちを張って 子どもらを護ろう
その気概を 今の世に満たさねば あの世には容易に旅立てぬ
いのちを張って 子どもらを慈しもう
その気概を 今の世に満たしてこそ 人生の価値が決まると心得よ
「ふくしとは」
「ふくし」とは
「ふだんの・くらしの・しあわせ」
冬休み 元気に過ごしているかな
給食がないけど 三食きちんと食べている
今日も 子どもだけでお留守番
お母さん 朝から晩まで頑張って働いているんだね
昼ご飯 一人で支度できるようになったんだ
下の子に ちゃんと食べさせなきゃね
偉いぞ
とても寒いね
暖かいかっこうしてるかな
寒い部屋にいないかな
風邪引いていない
えっ 咳してるの 熱はないかい
下の子熱があるから 氷枕で冷やしているのか
病院には 行ってないの
そうだよね 母さん仕事でいないから
お正月だし 病院にも連れて行けないんだね
風邪引いても 買い薬飲んで 我慢して寝るしかないのか
お母さんも心配で 辛いね
何かあったら 連絡できる人はいるのかい
そうか あんまり迷惑かけたくないか
暖かくして やわらかい温かいものと水分だけはとってね
看病してるって 偉いな
今年のお正月も どこも遊びに行けなかったんだね
お年玉を もらうこともなかったんだ
でもなに
お母さんが 新しい服を買ってくれたの
お正月の朝起きたら 枕元に置いてあって
前からほしかった服だから すごくうれしかった
よかったね
お母さん 喜んでくれることが 一番
また頑張って働こうって 元気がでるみたい
今度の休みにその服を着て みんなで買い物に行くって
お母さんと約束したんだ
だから 早く風邪を治してあげたいんだ
やっぱりきみは すごく偉いな
ただね
靴が小さくなって
歩くと少し痛い
ないものねだりせず
わがままもいわず
身を粉にして
いまのくらしを 子どもとまもる
「ふくし」とは 母と子の
「ふだんの・くらしの・しあわせ」づくり
「ペンギンさんのお通りだい!」
可愛いペンギン
冬の日差しを受けながら
でこぼこに一列つながって
朝の散歩に お出かけします
可愛いペンギン
ヨチヨチと 歩く姿はユーモラス
時々止まって 後から続く子を待ちます
目が合いました
幼いつぶらな瞳が 無造作に語りかけます
誘われたように おはようと声かけました
可愛いペンギン
キョトンとした表情を崩さずに
歩き出したそのとき 片手を振ってバイバイ返す
その立ち振る舞いこそ 今日一番の贈り物
こころは何だか 夢心地
可愛いペンギン
色とりどりの防寒具に身を包む
ヨチヨチ歩く後ろ姿に
こころは無防備 ただただホッコリ
スベりそうになりながら 元気な一歩踏みしめる
札幌のビルの谷間の風物詩
ペンギンさんのお通りだい!
「噴水に戯れる幼子」
札幌大通公園の噴水が
夏の暑い日を浴びて
キラキラと 硝子のように屈折する
それを一瞬遮(さえぎ)るように
幼子(おさなご)二人が 影となる
嬉しそうに 池の中で はしゃぐ
風向きが変わり
煌めく飛沫を 顔に浴びて
屈託のない大きな笑い声をあげる
噴水の音は 一瞬に消され
光と水の世界に戯れる㓜子らを
冷たい飛沫が やさしく包み込む
さりげなく幼子のいる夏の風物詩
見守る者たちの 安らぎの時を刻む
風に踊る飛沫は
幼子らに キラキラ世界を夢見させる
「泣く子と寛容」
乳飲みが泣く
大きな声を張りあげて 懸命に泣く
不安の中で 母を呼ぶ
乳がほしくて 母を呼ぶ
おしめが濡れて 母を呼ぶ
かまわれたくて 母を呼ぶ
乳飲み子が泣く
しゃくりあげながら 懸命に訴える
母のぬくもりを探しあて
くしゃくしゃになった泣き顔が
目にいっぱい涙をためた泣き顔が
ほどけ緩んで 笑顔に変わったその一瞬
言葉にならぬ 愛らしい甘えた声に早変わる
周りを気にする若い母
冷たい視線を痛く感じつつ
身を縮めて 辛抱強くあやし続ける
ようやく 二人に安堵の一時が訪れた
コロナ禍で 乳飲み子を連れ歩かねばならぬ母
不要不急の外出自粛が要請されても
家に子どもを置いて 用を足すことなどありえない
コロナ禍で 乳飲み子を連れた母親に
世間は冷たく視線を注ぐ
コロナ禍で やむにやまれずする外出に
強い不安と恐れをもって 我が子をギュッと抱きしめる
コロナ禍で そんな母子を守りたい
乳飲み子の泣き顔に 元気をもらおう
コロナ禍だからこそ 無事な成長を祈りたい
乳飲み子の泣き顔に 勇気をもらおう
コロナ禍に出会った 母子に言葉をかけよう
乳飲み子の泣き顔に ありがとうと
乳飲み子の泣き声こそが 懸命に生きている証
母子の明日の仕合わせが 約束された日となるように
乳飲み子の泣き顔を しっかりと目に焼き付けたい
コロナ禍に冒された社会に
乳飲み子の泣き顔が 寛容のこころを呼び起こす
この災難に立ち向かう あるべき人の道を指し示す
乳飲み子は 寛容のこころの拠り所
母子もまた 社会とともに
コロナ禍の時代に生きる力を 育てられて強くなる
「バイト漬け」
高校に入ってから
平日3日 土日もシフトをもらい
月3万円ほどの バイト代を稼いだ
楽しみは バイトが終わってから
友だちと携帯でおしゃべりすること
バイト代は 携帯代で消えた
目的は 携帯で友だちと夜遅くまで
おしゃべりすること?
なんだか可笑しい
高校は バイトが禁止されていた
でも 隠れてやった
帰宅部だから 遊ぶ金がほしかった
親には バイトしてることは内緒だった
適当に遊んで 適当に成績も取る
親には 進学すると言ってあるから
それなりに 金の工面もするはず?
それなりの 大学に入れるだろう
なんだか可笑しい
夜22時までしか 働けなかった
2年間 毎日バイトした
母の稼ぎでは 高校止まりだ
懸命に 進学資金を貯める
母には これ以上負担をかけたくない
下にはまだ幼いきょうだいもいる
中学では 部活はできなかった
母がフルタイムで働いていた
だから 保育所の迎えがあった
高校では バイトの合間に
仲のいい友だちとだべるのが 唯一の楽しみだった
コロナ禍が 生活を一変した
バイトも ままならなくなった
進学資金を貯める計画も 危うい
無理なら卒業後に バイト漬けになって
死に物狂いで 進学資金を貯めよう
1年延びても 夢はあきらめない
夢がなければ 青春はゼロになる
そう腹をくくる
「18歳 躍動せよ!」
18歳 一人前になった?
18歳 ここが節目のスタートライン
盛んな世と人への好奇心を 廃(すた)らすことなかれ
可能性は 自らの夢の実現に向う思いの中にあることを 知るべし
愚直(ぐちょく)な男であることに 頭(こうべ)を垂(た)れることなかれ
ちぐはぐなことが起こっても 決して怯(ひる)むことなかれ
苦労は 自ら望んだがゆえに 乗り越えなければならぬ道と承知せよ
労多くして功少なしことも 覚悟せよ
向き合うは 己を信じる心と わきまえよ
善き行いを常に心がけ 人の痛みに共感する人間力を磨き続けよ
夢に向かうセンスこそ いまを生きる原動力であることを 強く知るべし
目力(めじから)を鍛えよ 見えるものだけを信じる事なかれ
大きな志(こころざし)は 小さな努力を積み重ねの先に叶うと信じよ
いまという刻(とき)を 決してつまらぬことで浪費してはならない
今日為すべき事が はっきり見えていることこそ いまを生きる証なり
世の中の 荒波に身をさらしても 決して卑屈にならず くじけずあきらめることなかれ
生まれたことの喜びと苦しみを 全身に受けとめながら 青春を躍動せよ
18歳 これからの失敗と挫折を 己の器量(うつわ)に入れて 肥(こえ)にしよう
18歳 子どもと大人の中途半端なときから 独り立ちの準備を始めよう
18歳 どうもがいても 避けられない人生の節目に おめでとう
「つながる つなぐ」
あなたとの関係(つながり)が 失われそう
あなたとの距離(あいだ)が 遠のきそう
あなたとの信頼(こころ)が 壊れていきそう
だから 希望という名の種を蒔きました
明日が 変わろうとしています
昨日の今日では ありません
今日も変わってゆく 〈いま〉なのです
でも 希望という名の芽が出てきました
いのちが おびやかされています
暮らしが 崩れそうです
仕事も なくなりました
それでも 希望という名の根を 枯らしてはなりません
あなたとつながること
あなたをつなげること
あなたがひとりぼっちにならぬよう
希望という名の蕾を 一緒に見たいのです
辛い絶望の先に見える 希望という名の花
あなたとあなた そしてあなたも
あきらめず くじけず 信じて
つながって つないで
希望という名の花を 咲かせましょう
生きたいというおもいの先にある 希望という名の花
あなたとあなた そしてあなたも
明日がどんなに変わろうとも
つながって つないで
希望という名の花を 咲かせましょう
必ずいつか 一人ひとりの人生(くらし)に
希望という名の花が 咲きほころぶ日がきます
「バラード/この子よい子だ」
この子泣くなよ
わが身がつらい
この子笑えば
救われる
この子よい子だ
泣きたいときは
涙ためながら
笑(え)み返す
この子のこころよ
ただすこやかに
貧しいながらも
母ごころ
この子と一緒に
歩いて行こう
運命(さだめ)に負けぬと
抱きしめる
この子よい子だ
こころやさしい
つぶらな瞳に
宿る意思
この子見る夢
叶えておくれ
境遇(さだめ)を乗り越え
咲く 明日
「バラード/男の子守唄」
母をなくした
この子が不憫(ふびん)
父の背中で
だはんこく(ぐずる)
この子よく泣く
なんとしようもない
母を慕いて
求め泣く
働き疲れて
子を抱しめる
今宵もまたかと
気が滅入る
ようやく寝付いた
かわいい寝顔
鼻水たらして
泣き疲れ
母の残り香
嗅ぐ子に添って
メロディーあやしき
子守唄
「バラード/夕餉(ゆうげ)」
下の子見ながら
夕餉の支度
今宵も遅いと
電話きた
疲れた身体を
引きずりながら
灯りし窓辺に
子を想う
待ちくたびれてた
二人の声に
応える「ただいま」
弾む声
この子の手料理
つたない味も
こころこめられて
舌鼓
下の子しつけも
この子のおかげ
泣かずに待ちます
お利口さん
小さな仕合わせ
味わうここは
ぬくもりあふれて
夢語る
食卓囲んで
おしゃべり弾む
寄り添い生きます
母と子と
「君だけのうた」
君だけの うたがある
哀しいときに
ふと口ずさむ うたがある
耐え忍ぶときに
嗚咽(おえつ)を堪(こら)える うたがある
懐かしむときに
涙枯れる うたがある
君だけに 響くうたがある
辛くて逃げ出したいときに
踏みとどまる うたがある
不安にかられたときに
払いのける うたがある
悔いるしかないときに
立ち上がり歩きだす うたがある
誰かと 歌えるうたがある
嬉しいときに
こころも踊る うたがある
愛を確かめるときに
勇気をもらう うたがある
仕合わせなときに
わかちあう うたがある
君にしかわからぬ うたがある
人生を噛みしめる
苦くて甘い うたがある
人生の迷いを晴らす
目覚めに誘(いざな)う うたがある
人生を彩る
こころ模様が刻まれた うたがある
人生に希望をもたらす
意気に感じて動く うたがある
君だけのうたとともに
君は 明日を生きる