祈りの花火

札幌も いつもの夏なら
週末の夜には どこともなく
花火の音が していた
ベランダから 
小さな花火の輪が 見える夏もあった

コロナ禍は 夜空を彩る花火の
豪快で繊細な光と音の演舞を消した
コロナ禍は 夜空を見上げる花火に
興ずる歓声と感動を葬った
コロナ禍は 夜空の静寂を破る花火で
世の災いを打ち払う祈りを妨(さまた)げた

いつもの8月なら 
老人福祉施設の前庭は
地域と合同の夏祭りで 賑わう
でも 中止された
地域とのつながりは 
こんなことで奪われない
感染予防で頑張った利用者 職員 
お世話になった地域の方々への感謝を込めて
今夏も 花火を打ち上げる

コロナの収束と 無事を願った花火は
前庭に集まることなく 家々から見るだろう
利用者にも職員にも そして地域にも
ありがとう! 
がんばろう!
まけないぞ!
そんなおもいの和と輪を広げる
花火の美しい光と音の競演に 
熱く拍手を贈りたい

願うは 笑顔の連帯
祈るは 地域との共生・共存の約束

〔2020年7月31日書き下ろし。「和顔愛語」のおもいをこめて施設で今年も花火を上げる。夏休みの子どもらへのささやかなプレゼントになればいいな〕