曖昧な不安ではない
具体的に感じるのが恐怖である
不安は正常な判断を削ぐ
心に住みつき眠りを妨げる
恐怖は異常な弱さを呼び覚ます
心はひるみ身を縮める
命を賭けるに値する自由意思
強がり粋がっても 内実は恐怖心が襲う
権力者は思想統制を強化し 逆らう者は無慈悲に弾圧する
権力者は敵と見極め 糾弾する手は決して緩めない
手足となった者たちは 意を汲み忠実に義務を果たす
世間は家族をも非国民と 侮蔑し排除する
権力者に従順した官吏は その威を借りて捕縛する
転向を強制する拷問は 官吏の異常な職務に変わる
死をも恐れず 戦いし者たちの屍(しかばね)を越えて
戦後 自由を付与され謳歌した
経済的に潤うことが 幸せと思い違いしてきた
忖度するしか能のない政治家と官僚が 牛耳ってきた
反動は 社会や政治への批判力の急激な衰退だった
黒い歴史が 繰り返されようとする前兆を予感した
戦い散った先人たちの声が 甦(よみがえ)る
「恐怖にひるまず 対峙せよ」
〔2020年10月10日書き下ろし。民主主義のシステムを巧妙に利用し形骸化してきた弊害が如実に表れる日は遠くはない〕