著名な詩人たちの現代詩を 鑑賞することは苦手だった
難解な詩文を 読解するには素養があまりにも乏しかった
芸術まで高まった詩文は すでに崇高なものでしかなかった
書き続ける散文詩は 身の程をわきまえた作風
いまの暮らしの ひとつの私的な記録
時代の狭間で のたうち回る悲哀や
平凡な暮らしに訪れる 一時(いっとき)の平安の代弁
心疼(うず)く社会問題や凄惨な事件と人への 強い憤り
不条理で不正義がまかり通る 諦めへのいたたまれない警鐘
次世代に詫びを入れながら 託す小さな希望
いまの暮らしを綴る 一つの試行
詩作は 言葉の力を信じて描く
表現が平易なのは 〈わかる〉への第一条件
共感や反発で 心を動かす
上手下手の 優劣評価の枠外
ただ下心が働けば 修辞に走り無味となる
時代に翻弄されながらも
必死に生きようとする人間群像を 一人でも多く描きたい
理不尽な生き方を強要される子どもたちを 一人でも多く救いたい
民主主義を形骸化する政治や政治家に 一人でも強く反発したい
人として当たり前に生きる福祉を担う人たちを 一人でも熱く支えたい
タイムアウトまでの 限られた人生時間
散文詩の短いフレーズの中に 心をこめたい
言葉の力を借りて ことの本質を突きたい
散文詩を介して あなたといまを一緒に考えたい
※修辞(しゅうじ):言葉を効果的に使って、適切に表現すること。また,美しく巧みな言葉で飾って表現すること。また,その技術。
〔2020年12月25日書き下ろし。イブの夜、娘を送る車中で、父親として何を残してゆくのか、その一つに「世語り」の詩を書き続ける意味を語った〕