保坂美保子「めんけなぁ」

ぐずめで べっちょかいで
なぎべっちょかいで はちけるときのこの一瞬
つらっこくずして こぼれてくる涙のつらっこ
めんけなぁ

まんまるっこい目ど にらめっこ
ジッとつらっこ見てて あや なぐべがと思ったこの一瞬
ニコッと まさがのほほえみ返し
めんこいすべ

「こ」ってへば どしたもんだべがって
ゆ~っくり両方の手っこ伸ばして 抱がさってきたこの一瞬
やわらけえ かまりっこのするつらっこ
めんけなぁ

匙(しゃじ)自分でたなぐどって じょっぱって
口のまわりさ いっぺちらがすこの一瞬
おらもでぎるんでと にったり
めんこいすべ

ことばではねんども 声っこだして
指さすほうを みれってしゃべる
これだが?って おもちゃっこやるこの一瞬
んでねんでねって 首っこふってふぐれっつら
めんけなぁ

はだがっこで 湯船さはいって
湯のながで遊んで いたずらっこするこの一瞬
ほれがおもしぇどってわらって 赤(あげ)ぇつらっこして
めんこいすべ

めんけくて めんけくて
たんだたんだ めんけくて
包み込まれる いのちのぬぐもり
めんこいすべ めんこいすべ
ただたんだ ありがでぇ
包み込む 二人の深い慈しみ

いのちのあるかぎり 共に歩いていぐべし

〔2020年12月26日。秋田県大館市比内町在住の保坂美保子さん(一般財団法人大館市文教振興事業団大館市立栗盛記念図書館館長)が「めんこいしょ」(2019年9月14日に掲載)を地元の言葉で訳してくれた第一弾。郷土の言葉が紡がれ人は優しくなれる。これから「鳥居一頼の世語り」をプラットホームにして続々と各地の言葉で綴っていただきます〕