令和2年1月から11月までに
2万919人が自死した
アイヌ文化を復興するための空間と施設
ウポポイ(民族共生象徴空間)のある町
白老町の人口は1万6353人
ひとつのまちが消えてしまう人が 自死した
道内で一番小さな音威子府(おといねっぷ)村
人口699人
村の3分の2の人口に当たる
440人の小中高校生の子らが 自死した
うち307人は高校生
残る133人が小中学生だった
子どもが死に神に取り憑かれているときに
そのサインはあったのだろうか
そのサインに気づかなかったのだろうか
そのサインを見逃していたのだろうか
それともサインそのものが
分からなかったかもしれない
親も教師も友だちも
子どもが深い悩みの果てに逝ったことを 悔やみ続ける
表情や言葉の変化に気づかなかった
何か言いたげなそぶりに声をかけられなかった
心に刺さったトゲを抜いてあげられなかった
悩みを理解し得なかった
苦しみを分かち合えなかった
憤りを引き受けてあげられなかった
自傷に気づかなかった
見守りが突き放しと受けとめられた
なぜ死を選んだのか
死への誘惑を拒めず追い込まれた
その恐怖に戦慄を覚える
紡げなかった信頼
救えなかった悔恨
探りきれない因果
ナイーブな心の深淵を覗(のぞ)くことはできなくても
その子の頑なな心をほどくには 静かに語り合うしかない
その子の悩みを そばで聞いてあげるしかない
その子をかけがえのない存在だと 認め合うことしかない
自死へと追い詰めた後悔の先にあること
自死のサインを感じとるには
子どもと向き合い語り合う関係づくりしかない
異変を感じる心のアンテナを磨き続けるしかない
そして守り抜くという強い意思を表明することだ
自死した子ども一人ひとりの冥福を祈りつつ
弱き者を自死へと追い詰めた歪(いびつ)な社会への
声なき警鐘として 受けとめよう
蔑(ないがし)ろにされた人がつながる力を取り戻す
声なき願いとして 受けとめよう
※白老町と音威子府村の人口は令和2年12月末現在です。
〔2021年1月23日書き下ろし。自死に追い詰められ恐怖にただおののく。想像するだけで痛い!身近にいることを忘れてはならない〕
付記
自殺、11年ぶり増 女性大幅増・小中高生過去最多 昨年、速報値
2020年は自殺者数が11年ぶりに増え、2万919人(速報値)だったと22日、厚生労働省が発表した。女性が6976人で前年より885人(14・5%)増加。若い世代の増加も目立ち、小中高生は1~11月だけで440人(前年同期比18・3%増)と、過去最多だった1986年の年間合計を上回った。厚労省は新型コロナウイルスによる生活の変化などが背景にある可能性があるとみている。
警察庁の統計をもとにした厚労省の発表によると、男性は1万3943人(前年比135人減)。女性と合わせて前年より750人(3・7%)増えた。人口10万人あたりの自殺者数は16・6人。例年、3月発表の「確定値」ではさらに増える傾向にある。
…厚労省の担当者は、コロナ禍による経済的な影響や生活環境の変化、学校の休校、外出自粛などが影響した可能性があるとして「厳しい状況だ。女性は幅広い年代、職業、原因・動機で増加しており、悩みに応じて支援していきたい」と話す。
…小中高校生の自殺者のうち307人が高校生で、初めて300人を上回った。女子児童・生徒の自殺者は前年同期より48・8%増えた。(朝日新聞2021年1月23日)