初恋は 想い出によって語られるからこそ美しい
その感慨こそ 誰もが納得する
その歓喜こそ 誰もが心に刻む
ただ失恋の痛みは 飾るしかない
想い出せない
想い出したくない
想い出して欲しくない
消し去りたい過去に 人は執着する
想い出の補正しか 避ける術(すべ)はない
想い出の美化しか 繕う術はない
想い出の忘却しか 逃げる術はない
消し去りたい過去に 縛られる
慙愧に堪えない過去に おののく
嘘で塗られた過去を 上書きする
初恋の純朴さを想い出すということ
失った純真
涸れた憧憬
捨てた希望
空虚な人生
※慙愧(ざんき):元来は仏教語で、「慚」は自己に対して恥じること、「愧」は外部に対してその気持ちを示すことと解釈された。自分の言動を反省して恥ずかしく思うこと。
〔2021年2月21日書き下ろし。初恋を美化する心に潜む闇とは何かを問う〕