孤独なる生命と魂

立花隆氏の死を悼む
「死後の世界が存在するのかどうかは、個々人の情念の世界の問題であって、
論理的に考えて正しい答えを出そうとするような世界の問題ではない」
(立花隆『知の旅は終わらない』より)

この世に ひとり生まれし生命(いのち)と魂
この世を ひとり去りし生命と魂
宇宙の時空の大いなる環のなかに 
〈わたし〉という人間存在を問う

孤独なる生命と魂
いまにとどまることなく 明日に進む時間
生命と魂は 運命づけられた有限の時間を生きる
閉じ込められ制約された空間
生命と魂は 約束された地の環境に生きる

孤独なる生命と魂
時空間に規定された存在としての〈わたし〉
意思ある生命体の存在としての〈わたし〉
生きたいと渇望し死を遠ざける〈わたし〉
つながりあう社会の存在としての〈わたし〉

孤独なる生命と魂
なぜ現世に生まれてきたのか
なぜ生きなければならないのか
なぜ人として生かされてきたのか
解を求め続ける 不可解な〈わたし〉

孤独なる生命と魂
人生の苦悩を 分かち合いたい人がいる
人生の意味を 孤独な魂に見出す人がいる
人生の価値を 愛に求める人がいる
生きる最中に 死の恐怖に抗(あらが)い闘う〈わたし〉 

ときに人は ひとりぼっちであるが
決して ひとりぼっちにはならない
生命と魂を救ってきたもの
それが愛だとすれば
そのことだけは 紛れもない真実だ

現世から解き放されるその日まで
情念の世界に執着し もがき続ける
凡なる〈わたし〉を 生きるしかない

〔2021年6月23日書き下ろし。生に執着し、孤独であるがゆえに求めてやまぬ愛なくば生きてはいけない〕