歪む線路

稚内を出て1時間
当然 車内放送が流れた
この先の線路に 歪みが見つかった
点検のために 幌延駅に臨時停車する

炎天下にさらされた線路は
最北の鉄道を苛(さいな)める
18:45 日が陰り 冷気も流れる時間帯になった

特急宗谷の折り返し運転で
20分も同じ原因で 稚内到着が遅れた
戻り道のタイミングで またも歪みが見つかった
保線車輌が到着するまで どのような展開になるのかわからない
状況を見守り待つしかない

1ヶ月以上 雨がない
道北地域は かってない30度の灼熱を浴び続ける
草地は2番草を諦め 早々に刈り3番草に期待をかける
牛飼いには かなりのダメージだ
冬の餌が減るのを 覚悟した 
畑も 生育がおぼつかない
畑は日に焼かれ 雑草だけが繁茂する

アナウンス入る
保線区から18:50に出て 現地には19:30到着予定
安全点検完了まで どれだけの時間を要するのか不明
復旧の目処が立ちにくければ と不安がよぎる
旭川までの まだ3時間の行程が残っている
代替えのバスを用意するにも 一番近いのは稚内
手配に手間取れば 1時間以上はかかる
ただ乗客数が 50人にも満たないのが幸いか
コロナ対策を考えると 2台用意が必要か
とりとめもなく 緊急時の対応を想像する

夕飯は車内で 弁当をつまみにビールを飲んだ 
腹は 明日の朝まで十分持つ
水も充分ある
いまは 状況の変化と指示を待つだけの身でいる

アナウンス
19:27 保線車現地到着し点検開始
復旧の時間の目処は不明

JR北海道は 道北で線路が歪むとは想定外だったろう
列車は札幌行だが 旭川で乗り換える人もいる
このままでは 列車の連絡は難しい
旭川泊まりを 覚悟しなければならない
その宿泊費は JRは負担しない

数えたら 27名が現在4車輌に乗車中
それぞれの思惑を抱えた列車の囚われ人は
次のアナウンスを 待つ 
19:56 現在点検中 終了時間未定
まだかかる様子

20:20 20分後に出発見込みを伝える
安堵する
20:37 まもなく発車のアナウンスで
20:40 幌延駅を2時間遅れで出発する

途中臨時停車して 保線員を拾う
突発的な事態に素早く対処し 現場で復旧作業に当たる
厳しい仕事に 感謝しかない
旭川に2時間以上到着が遅れると 
特急券払い戻しの事態となる
JRは今度は時間との勝負となる
 
この日旭川は 36・2度
133年の観測史上一番高かった
市内の江丹別は36・9度
旭川市内は 今月100名以上が熱中症で緊急搬送された

2時間を17分オーバーして 旭川駅に着いた
特急券の払い戻しとなった

この熱波 いつまで続くのやら
歪むのは線路か 地球か 

〔2021年7月27日書き下ろし。今朝仕事の関係で旭川から夜送る予定でいたが、アクシデントのため、切り替えて明朝アップする〕