夢のない新生活

「夢のない新生活」
50代男性はそう取材に答えた
被災から1ヶ月
熱海は五輪の熱気などさらさらない
家をなくした被災者は
公営住宅入居見学会に訪れ呟いた

五輪が開催されて11日目
台風も東北に逸れ暴風水害もなかった
熱湯列島はメディアに煽られ熱闘列島と化した
残りの日程に事故や不運がないことを願うだけだ

五輪から遠く離れた時空間
東北は見せかけだけの復興五輪が終わった
徒労と無駄と無念さが残された
熱海は観光地の集客を諦めた
悲歎と憤怒と諦めが葛藤する
全国の災害被災地はニュースにならず
日々の暮らしの再建にひたすら汗する

五輪が終わればたくさんの廃棄物が吐き出される
選手村の改装で無用になった物品
五輪会場の整理と整備
湯水のように浪費した税金の収支決算と言い訳
感染拡大で医療機関から出た大量の医療廃棄物
開催に加担した者たちの責任追及と人員整理
廃棄すべき議員の選択作業も 粛々と始まる
彼らに「夢のない新生活」をプレゼントしたい

〔2021年8月2日書き下ろし。熱海の災害は遠い夏の日の出来事。五輪に熱狂させ忘却の彼方に捨て置かれる。政治とはご都合主義の人心操作に尽きる〕