人間狩りが始まった

タリバンに反旗をひるがえす市民のデモに
容赦なく重機関銃が撃ち込まれる
覆面をした黒装束集団はテロリストそのもの
逃げ惑う市民をせせら笑うように銃を懐に抱く
逃げ遅れた母は 背を丸め怯えた子を抱く
情け容赦なく反タリバン勢力を排除する

カブールではタリバンの指導者が会見する
「民間の報道機関は自由で独立した活動を続けていい」
イスラム原理主義を懐に抱いて穏健を装う
イスラムの価値に反しないこと
タリバンの神を押しつける
公平であること
タリバンの歪んだ思想を押しつける
国益や国家統合に反しないこと
タリバンの殺戮の理由を押しつける

3つの条件そのものは理不尽そのもの
そもそも国際社会は国家として承認してない
タリバンの兵士たちは勝手な裁量で狩りを始める
宗教と銃で自由意思を蔑(ないがし)ろにする残虐な暴力的支配
人権すら認めない婦女子への教育や社会参加への否定と排斥

銃を持つ手は正義の使者
反サリバンの殺戮に意気込む
鬱憤を晴らす狩り場となった
誰でもいい
殺したかった

聖戦でもなんでもない
ただのごろつきの殺戮集団
殺す理由はいくらでも作った
逃げ惑う人間狩りこそ快感だった
狂気の者たちに凶器を与え存分に殺しを楽しませた

全ては聖戦であり正義の戦いだと勝利に酔う
ミャンマーの軍事クーデターと相通じる恐怖政治が始まった
赤子といえども殺すには容赦ない
殺したいから殺すという麻薬のような快感を覚えた
敵は人とは思わず人でなしが指揮を執る
言葉と行為が離反した者たちが狂気の世界を生きる
アフガンはテロの温床となり世界中を恐怖に陥れる
聖戦での殉死は神に召される名誉を与える
決して死ぬことを恐れるなと人間兵器を送り込む

戦え! 正義は我にあり! 殺せ!
戦え! 聖戦だ! 死に物狂いで殺せ!
戦え! 怯(ひる)むな! 殺せ!
戦え! ためらうな! 殺せ!

道端にうずくまった母と子は
恐怖の世界にどれだけ生きることができるのだろうか
国外に脱出できても果たして生きていけるのだろうか

〔2021年8月21日書き下ろし。殺しを洗脳された狂気の兵士たちは重機関銃を手に殺戮の限りを尽くすだろう。タリバンの恐怖政治が始まった〕

付記
独メディア記者の家族殺害 「タリバンが捜索、襲撃」報道
ドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレ(DW)は19日、同放送の記者の家族1人がアフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンに殺害され、別の1人が重傷を負ったことを明らかにした。タリバンは現地でこの記者を見つけ出すため、一軒ずつ捜し回っていたという。ただ、この記者は事件当時ドイツにいた。少なくとも3人のDW記者の家が襲われたとしている。
DWは「タリバンはカブールや地方で記者の組織的な捜索をしているようだ。我々には時間がない」とし、政府に対応を求めた。
タリバン幹部は17日の記者会見で「民間の報道機関は自由で独立した活動を続けていい」と述べていた。ただ、「イスラムの価値に反しないこと」「公平であること」「国益や国家統合に反しないこと」などの条件をつけていた。
また、ドイツ政府は20日、カブールの空港に向かっていたドイツの民間人の男性が撃たれたと発表した。手当てを受け、命に別条はないという。(朝日新聞2021年8月21日)