劣悪なトイレ

市内の大学にある障がい者が利用する仕様のトイレ
いままで見たなかで最も適当かつ劣悪な仕様だった
誰が設計したのか恥さらしの仕様だった

車いすユーザーが入った
ヘルプの声がしてなかに入った
まずその狭さに驚いた
車いすでは方向転換ができない
ましてや便座のそばまで自力で車いすを移動できない
便座を金属棒が柵のように取り囲む
それを伝わって歩いて辿り着かす仕様だ
車いすを便座の前に置いて移乗するには柵の隙間を通るしかない
その関門に苦戦した結果のヘルプだった
手回しのハンドルを使うことのできない関門をギリギリ通過する
電動車いすではきっと無理だろう
次に便座に移乗するための介助に苦労する
金属棒と便座の狭い空間では腰を曲げることすらできないのだ
ようやく落ち着いたので外で待機する

大きな声が上がった
ドアを開けると金属棒が頭に乗っかっていた
左横にあった棒を握った瞬間倒れてきたという
なぜそんなことが起こったのか
棒は右の柵に横がけにして上体が前屈みにならぬよう補助するものだった
彼の震える左手が棒にかかれば簡単に落ちてくる
そんな仕組みを知らぬまま握ってしまったことで悲劇が起きた
何か異変が起こるかと心配した
後頭部にたんこぶができたと翌日メールで知らされた
そもそもこんな具合に設備されているところは見たことがない

終わると車いすに移乗させて関門を出る
次に手を洗う洗面台が笑える
車いすが下に入れず手を伸ばしても蛇口に届かないのだ
名ばかりのトイレ仕様に呆れかえった
大学でユニバーサルデザインを考えるきっかけをもらった
彼の痛みの代償に折角用意された劣悪トイレを教材にする
問題を提起したときの学生の反響を楽しみにしたい

〔2021年10月16日書き下ろし。車いすユーザーが使用するトイレの概念が根こそぎ崩された。身近な教材を活用して学生との学びを深めたい〕