ホームヘルパーが忍従を強いられている
町内に住む独り暮らしの老女の家事援助
老女はあたってマヒが残った
それでも自宅で暮らしたかった
そこに通うのは苦痛になった
内地に住む娘が時折りやってきては
クレームの限りを尽くす
金を出して雇っている家政婦
命じたままにしなければならない下僕
見下した横柄な態度に心が折れた
怒声を浴びせいたぶる
感謝の欠片もない
割り切れない感情労働
気力は萎み
心は凹んで
意欲は失せる
このままではヘルパーを助けられない
不当な言動に抗議し契約を破棄する
それはできるのだ
ただできないジレンマの中に立たされる
町内にヘルパーの事業所はたった一つ
支援を得られなければ老女は孤立する
頼りの在宅支援ネットはここにしかない
福祉を担う事業所とヘルパーが老女の救い手
福祉の理念を掲げる以上捨て置けない
娘の心ないクレームに老母の心も折れてゆく
大きなジレンマを抱えて在宅支援は危機に瀕する
貴重な福祉の人材が理不尽な言動で離職を迫られる
クレーマー化する消費者意識の高い者たちは
老いた親を日々介護することなく他人に預ける
聴く耳持たぬクレーマーは
今日もどこかでえげつなく吠えている
〔2021年11月24日書き下ろし。小さな町で起こっている事態に苦慮する。えげつない者たちが平然とヘルパーをいたぶる〕