薄暗い街灯の光をよぎって雪が降る
闇の中を斜めに雪は舞う
母は赤いかくまきに幼子をつつんだ
家路を急ぐには歩きにくかった
雪は激しくなり行く手を阻む
母は赤いかくまきで幼子を守る
二人の幼子は母の服を握って歩く
母は幼子の肩を抱く
母は赤いかくまきで幼子をくるむ
窓外の降り積もりそうな雪の朝
赤いかくまきを着た母を想った
母のぬくもりの中にいた
遠い記憶の欠片を拾う
※角巻(かくまき):四角い形をした毛布の肩掛け。背の高さに応じて三角に折って着る。別に帽子をかぶることが多い。おもに、東北地方などの寒冷地で、外出の際に、女性が防寒用として用いる。
〔2021年12月17日書き下ろし。本格的に降り出した雪の朝、赤い角巻の母を鮮明に覚えているのはなぜか。不思議な感覚だった〕