退任の挨拶文

六十年余に渡って福祉の世界にいた
五十年勤めた法人をこの春退任する
機関誌に掲載する手書きの挨拶文を預かった

便箋3枚に達筆な文字が流れる
見慣れた文字を戸惑うことなくタイプする
気取らぬ平易な文章はその人柄を映す

職員への感謝の思いが溢れている
優しさと思いやりが滲み出ていた
紹介する事例は職員への賛辞だった

決しておごることなく穏やかだった
いつも口調は誰にでも柔らかかった
慈愛のまなざしは分け隔てなく向けられた

常に時代の風を読み舵を取ってきた
新しきことへの鋭い嗅覚と時代感覚は本物だった
判断力は出会った人と書物に比例した

時代に切り込むチャレンジ精神と突破力は半端ではなかった
時代を担うリーダーシップも影響力も半端じゃなかった
時代が求める胆力と寛容の器は半端じゃなかった

ひけらかすこともなく淡々と感謝を表す
気負うこともなく飄々と退任の辞を表す
継ぐ者たちへの新たな舞台に期待を表す

「和顔愛語」のこころと
「Think Future Act Now」
〈未来を考え いま為すべき事を為す〉
揺るぎない理念と心構えが次代に継承される

〔2022年1月21日書き下ろし。我が師の退任の辞をタイプした。感慨無量である〕