〇まず次のことを確認しておきたい。
●地域福祉における評価は、実践の成果や課題解決の側面から行われる「タスクゴール」(課題達成)、実践の過程や住民・関係主体の参加や連携・協働の側面から行われる「プロセスゴールス」(過程達成)、住民や行政などの関係性や地域の権力構造の側面から行われる「リレーションシップゴール」(関係力学変容)という視点が重視される(補遺(1) 参照)。
●学校教育における評価は、それがいつ行われるかによって、教育活動を始める前に行われる「診断的評価」、教育活動の途中で行われる「形成的評価」、教育活動が終了した後で行われる「総括的評価」に分けられる(補遺(2)参照)。
●問題・課題解決を図るための福祉・教育実践は、計画の立案・仮説の設定を行い(Plan)、計画・仮説を実行し(Do)、実行した結果に基づいて計画・仮説を評価・検証し(Check)、計画・仮説の改善・修正を行う(Action)、というプロセスを経る。そしてそれを、次の新たな取り組みに活かす。いわゆる「PDCAサイクル」である(仮の結論=仮説を設定して考える問題解決のための思考法を「仮説思考」という)。
●市民福祉教育の実践プログラムの企画・立案は、例えば、「学習者の設定・理解」、「学習要求と学習必要の把握」、「学習目標と内容・方法等の選定」、「実践プログラムの実施」、「学習評価とその共有」、「実践プログラムの改善・再計画」などの流れで行われる。
〇筆者の手もとに、荻野亮吾・丹間康仁編著『地域教育経営論』(大学教育出版、2022年10月。以下[1])がある。サブタイトルは「学び続けられる地域社会のデザイン」である。周知の通り、社会福祉では「我が事・丸ごと」地域共生社会の政策化が図られ、学校教育では新学習指導要領が提唱する「社会に開かれた教育課程」の具体化が志向されている(補遺(3)参照)。福祉教育では、共生社会の形成や多文化共生の実質化をめざした「地域を基盤とした福祉教育」の推進が要請されている。これらはいずれも、誰もが地域社会づくり(まちづくり)に参加し、安全で快適に「住み続けられる地域社会のデザイン」を企図している。その点において[1]は、一面では、時宜にかなったものであり、「まちづくりと市民福祉教育」について思考する筆者にとって興味をそそられる。
〇[1]では、地域社会を教育の基盤として位置づけ、学校教育と社会教育の双方の視点から、生涯学習を可能にする地域社会を総合的にデザインし、その運営について考える「地域教育経営」という枠組みを提示する(ⅰページ)。そして、「地域教育経営とは、学校の構成員や地域社会で暮らす人々を教育の当事者として位置づけ、それらの人々の間に『つながり』を紡ぐことで、学校運営協議会などの組織化された公的な意思決定の場面をはじめ、教育に関して『熟議』がなされる領域を日常的なさまざまな場面にも広げていこうとする実践、および、それを支える仕組みや制度に関する理論」である、と定義づける(17ページ)。
〇この定義では、地域教育経営を実現するための要素として、「つながり」と「熟議」が重視される。すなわち、地域住民をはじめ行政や企業、関係機関・組織などの「つながり」づくりが地域教育経営の基礎に位置づけられる。そして、「熟議」が、単なる話し合いではなく、地域社会を構成するさまざまな主体(関係主体)が連携・協働してまちづくりを推進し、地域社会に新たな「つながり」を紡ぐ実践として重要視される(18ページ)。定義でいう「学校運営協議会」は、教育委員会によって学校内に設置され、保護者や地域住民などが一定の権限を持って学校運営に参加する合議制の機関である。2004年9月の法定化以来、2021年5月現在で学校運営協議会を設置する学校(コミュニティ・スクール)は、全国の公立学校(幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校)の33.3%にあたる1万1,856校を数えている。
〇[1]は、地域教育経営の「見取り図」を示し、各地域の課題解決に向けた先進事例を紹介しながら「課題と展開」、「主体とパートナーシップ」、「デザインと評価」について議論する、入門・基礎レベルのテキストとして編まれている。筆者にとってはとりわけ、身近な地域社会での「つながり」と「熟議」をどのように組織化するか、地域教育経営の目標である「エンパワーメント」をどのように実現するか、そして住民主体の活動をどのように評価するか、などの論究(実践的方法論)が興味深い。
〇これらの点について、[1]における論点や言説のいくつかをメモっておく(抜き書きと要約。見出しは筆者。見出しの後の氏名は分担執筆者)。
コミュニティにおける話し合いの問題と対処法/佐藤智子
●古典的な意味でのコミュニティは、一定の地域的範囲(範域)をもつ「地域性」と、そこでの生活の「共同性」をその要素としている( R.M.マッキーバー)。現代におけるコミュニティは、一定地域に「常に在るもの」ではなく「失われつつあるもの」となり、ゆえに多くの場合、「新たにつくられるべきもの」ととらえられている。(162ページ)
●分断された社会に共生を取り戻し、包摂的なコミュニティを構築していく過程では、対話(話し合い)が欠かせない。話し合いの場では、①社会的な「上下関係」に起因した遠慮(反対意見を言いづらいなど)、②参加者間での前提の不一致や非共有(意見の前提にある情報や事実認識が異なるために話がかみ合わないなど)、③義務的な参加動機(話し合いに対してやる気がない、地域の問題に興味がないなど)、④発想の固定化(似通った意見しか出ないなど)、などの問題が生じやすい。(163、169~170ページ)
●こうした問題に対処するためには、①水平的な関係づくりを重視する(参加者の属性による区別も優遇もしないなど)、②情報やアイディアの提供(アウトプット)とともに吸収(インプット)を重視する(参加者が客観的な情報を吸収することができるなど)、③「楽しい」という感覚を優先する(参加者が意見表明や情報吸収に楽しさを感じるなど)、④問題解決や合意形成を目的としない(すべての参加者によって表明された意見やアイディア全体を総括し集約するなど)、などが有効である。(170~171ページ)
「まちの居場所」の種類とデザインの方法/荻野亮吾・高瀬麻以
●「まちの居場所」(たまり場)は、飲食店や自宅、公共スペースなどの場を開放して、交流やつながりづくりを重視するコミュニティカフェ型の居場所、高齢者・子ども・子育て支援などをテーマに、社会的課題の解決を目的とするコミュニティケア(community care)型の居場所、さまざまな人たちが出入りして独立した仕事を行うスペースだけでなく、属性の異なる利用者の交流や地域活動・市民活動を支援する場としてのコワーキングスペース(coworking space)型の居場所など、多種多様な形態をとる。(177~180ページ)
●それらは、既存の制度や施設の枠組みからこぼれおちたニーズ(隙間)に対応しようとするものであり、個々人が孤立せず他者と居合わすことができる場である。しかも、気軽に利用しやすい日常生活の場に根ざして設置され、地域の人々が中心になって運営される点に特徴がある。(175~176ページ)
●「まちの居場所」づくりは、それに関わる人それぞれが「想い」を出し合い・デザインし、誰もが気持ちよく参加することのできる空間・時間づくりや人間関係づくり(「空間」「時間」「人間(じんかん)」「隙間」の4つの「間」をデザインすること)を進め、ゆるやかな関係のなかで関わる人々がその「役割」を少しずつ担い・デザインしながら、自分たちの居場所を徐々に創出する「熟議」の過程が重要となる。(180~183、185ページ)
地域課題の解決とエンパワメント/菅原育子
●人々が、自分(たち)のもつ力や可能性を知り、自ら(地域の)課題解決に向けて行動したり、環境をより良くしようとすることや、そのための力を得たり力を発揮する過程は、「エンパワメント(empowerment)」という概念で説明される。エンパワメントとは、力を引き出す、力を与えるといった意味をもつ言葉である。(202ページ)
●地域社会におけるエンパワメントは、「専門家に頼るのではなく、住民自らが力をつけること」(住民個人のエンパワメント)とともに、組織や地域が「多様な個人を活かしながら地域の課題解決への力量形成をめざすこと」(組織・コミュニティのエンパワメント)と表現される。住民が中心となり、他者と協働して地域が抱えるさまざまな課題に向かって行動する地域づくりは、住民、住民主体の活動、そして地域全体のエンパワメントを推進することと同義である。(202ページ)
●エンパワメントは、住民と地域の関係性を理解し、住民主体の活動への支援を考えるうえで欠かせない概念である。そして、エンパワメントを推進する過程で不可欠となるのが、活動の評価である。評価とは、対象について、なぜそれをするのか、どのようにするのか、その結果どう変わったか、その変化は期待したものであったか、などの問いにこたえる行為である。(202ページ)
「住民参加型評価」とその流れ/菅原育子
●課題解決をめざす活動(「プログラム」)は一般的に、①ニーズや課題の把握、②企画と関係者の巻き込み、③具体的な実施体制の構築と実行計画の立案、④計画の実行と改善・修正、⑤最終的な振り返り、という流れで計画・実行されるが、評価(「プログラム評価」)はこの各段階で行われる。①の段階では状況把握のための「ニーズ評価」、②③の段階では活動の目標や計画が妥当かを評価する「セオリー評価」、④の段階では活動が計画通りに実行されているかを評価する「プロセス評価」や短期的な成果を評価する「アウトカム評価」、⑤の段階では長期的な成果を評価する「アウトカム評価」や活動の広範な影響を評価する「インパクト評価」が行われる。(204ページ。表1参照)
●住民をはじめとする当事者にとって、評価は活動を整理し、改善し、推進するのに役立つ。また、自分たちの置かれた状況を客観的に理解し、自分たちの強みや弱みを知り、関係者全員で課題を共有することや、活動の目的を共有することにつながる。さらに、活動展開中の評価は、活動の目的を関係者間で再確認し、自分たちの活動が期待していた成果に向かって進んでいるかを把握し、うまくいっていない時には活動内容を見直し改善することにつながる。また、うまくいっている時には、自信をもって活動を継続することに結びつく。(203ページ)
●(当事者である住民と評価の専門家が協働して行う住民「参加型評価」について)源由理子は、評価のプロセスを「評価の事前準備」および「評価の設計」「データの収集と分析」「データの価値づけと解釈」「評価情報の報告と共有」の4段階に分けたうえで、「参加型評価」の基本的な流れとして、各段階で当事者がどのように評価に参加し役割を担うかを設計する手順を示している。参加型評価においては、評価の4段階すべてにおいて、住民を含めた関係者が対話・討議を行い、合意形成を行いながら進めていくプロセスが重視される。多様な関係者が一同に介し(一堂に会し)、対話と討議を行う場として評価ワークショップ、または検討会と呼ばれる場を設ける手法が多く用いられる。参加型評価に関わる専門家には、これらの対話の場において多様で対等な意見の発散・構造化・収斂(しゅうれん)を導くファシリテーターとしての技能が求められる。(206~207ページ。図1、表2参照)
「エンパワメント評価」と地域のエンパワメントの実現/菅原育子
●参加型評価のなかでも、評価における当事者の参加と、参加を通したエンパワメントを強調するのが「エンパワメント評価」である。それは、当事者が主体的に評価を行い、その過程で評価に必要な技術を取得し、評価をもとに当事者自身が活動のすべてを決定することに重点を置く点で、徹底した当事者主体の評価手法である。(207ページ)
●評価は、当事者が自分たちのためのものであると実感でき、評価を通して活動の改善や深化が達成できるときに、(当事者個人や組織・コミュニティの)エンパワメントにつながる。評価の目的を関係者で共有し、適切な評価のデザインを協議しながら決めていくことが、(住民をはじめとする)当事者の主体性を高め、エンパワメント促進につながる評価の条件である。(211ページ)
〇ここで、上述の菅原が引用する源の言説(評価論)を引いておくことにする。表1の「プログラム評価の主な焦点」、図1の「参加型評価の流れ」、表2の「参加型評価の主な作業」がそれである(源由理子編著『参加型評価―改善と変革のための評価の実践―』晃洋書房、2016年11月)。
〇ところで、「まちづくりと市民福祉教育」実践では、福祉・教育関係機関・組織などが所在する地域を基盤に、子ども・青年や大人、高齢者や障がい者、行政や関係主体など多様な実践主体によって展開され、「つながり」と「熟議」を通じた合意形成と、実践(援助・支援、活動)や運動を通じた主体形成を図ることが必要かつ重要となる。
〇その際、地域の実態・実情やそれまでの実践・運動を分析し、それを通してどのような状態・到達目標を設定するか、それに対してどのような内容・方法が有効で、どのような状態・成果が期待できるか、などについて事前に体系的に検討することが肝要となる。いわゆる「実践仮説」の設定である。
〇そして、そこに求められるのは、多様な実践主体が参加して展開される住民「参加型」評価である。上述の源によると、対話による合意形成を前提とした参加型評価では、評価対象に対する帰属意識やプログラム(課題解決をめざす活動)に対する当事者意識が高まり、結果として評価情報の共有や活用の度合いが高まることが期待される。そして、「参加型評価をとおして民主的な市民参加の場を提供することが、社会の改善や変革に貢献する」(源『前述書』19ページ)ことになる。
〇以上を踏まえて、「まちづくりと市民福祉教育」に関する住民「参加型評価」について、ひとつの「評価指標の体系」を図2(試案)に示すことにする。
〇加えて、「まちづくりと市民福祉教育」に関する総括的評価の設問を例示しておく。以下の「この活動」についてはとりあえず、コミュニティソーシャルワークの代表的な実践である地域福祉(活動)計画の策定活動とその主体である地域住民(子ども・青年や大人、高齢者、障がい者など)を念頭に置いている。
ニーズ評価 × 学習者の設定・理解
・このまちはいま、どんな問題や課題を抱えていると思っていましたか
・この活動は、社会のニーズに合っていると思っていましたか
・この活動を通してまちづくりに参加しようと思った理由はなんでしたか
セオリー評価 × 学習要求と学習必要の把握 × 学習目標と内容・方法等の選定
・この活動の目的や取り組みの内容・方法等についてどう思いましたか
・この活動に参加するにあたってなにを学びたい・学ぶべきだと思いましたか
・この活動に関する学習の目標や内容・方法等についてどう思いましたか
プロセス評価 × 実践プログラムの実施
・この活動と学習は計画通り・期待していたように実施されたと思いますか
・この活動と学習を通して住民や関係機関等のつながりが深まり・広がったと思い ますか
・この活動と学習について、あるいはそれを通して話し合いが深まり・広がったと 思いますか
アウトカム評価・インカム評価 × 学習評価とその共有
・この活動に参加する意欲や推進する能力は高まったと思いますか
・この活動に関する学習は活動を進めるうえで役立ったと思いますか
・この活動と学習を通してまちづくりについての認識は変わったと思いますか
費用対便益・費用対効果 × 実践プログラムの改善・再計画
・この活動と学習は効果的・効率的に取り組まれたと思いますか
・この活動と学習は見直し、改善・修正する必要があると思いますか
・この活動と学習は今後も継続あるいは拡大する必要があると思いますか
〇なお、社会福祉実践プログラムにおける「参加型評価」の適用をめぐって論究したものに、藤島薫『福祉実践プログラムにおける参加型評価の理論と実践』(みらい、2014年3月)がある。参照されたい。
補遺
(1)タスクゴール、プロセスゴール、リレーションシップゴール
タスク・ゴールは、目的達成面からの評価で、地域の福祉課題や生活問題を具体的にどの程度解決したか、福祉ニーズに対して社会資源の提供はどの程度活用されたか、問題解決に住民はどの程度満足しているか、などを量的・質的側面から評価する。
プロセス・ゴールは、課題達成に至るまでの諸過程、手続きを重視する側面からの評価で、住民(組織)が計画から実施の過程でどういう形で参加したか、参加を通じて問題解決能力をどれだけ身につけたか、住民組織や機関の協働促進はどう進展したか、また、その主体形成力はどう図られたかなどの評価である。
リレーションシップ・ゴールは、関係面からの評価で、地域住民や当事者の声及びニーズがどの程度活動に反映し、取り入れられたか、組織活動を通して地域の民主化は進展したか、当事者などの人権は擁護されたか、地域住民の連帯感は強まったか、などを評価する。これら3つの評価視点は業務分析に当たって総合的に活用してこそ有効である。
(日本地域福祉学会編集『地域福祉事典』中央法規出版、1997年12月、229ページ)
(2)診断的評価、形成的評価、総合的評価
事前的診断的評価は、新しい課程、学年、学期、単元、授業などに入る前に、指導の参考となる各種の事前的情報を収集する目的で行う評価である。例えば、新しい学習内容を習得するのに必要なレディネスの獲得状況(知識や経験、環境などの準備状態:筆者)、新しい学習内容の予習状況、あるいは習熟度・知能・性格・興味・適性などに関する情報が収集される。
形成的評価は、従業中・授業後・小単元終了時など、ある単元の指導を進める過程で、途中で学習者の学習状況(教育目標の達成状況)を確認し、教師と学習者の双方にフィードバックし、つまずきの早期発見・早期回復を行うことにより、学力形成に利用する目的で行う評価である。
総括的評価は、課程、学年、学期、単元の終了時などに、1つ以上の単元にまたがる広い範囲について、そこでの学習成果をまとめ、成績づけに利用する目的で行う評価である。すなわち、卒業(修了)試験、学年末試験、学期末試験などが総括的評価の手段である。
(辰野千壽・石田恒好・北尾倫彦監修『教育評価事典』図書文化社、2006年6月、62ページ)
(3)「社会に開かれた教育課程」
〇新学習指導要領(小学校は2020年度、中学校は2021年度から全面実施、高等学校は2022年度から年次進行で実施)は新たに設けられたその「前文」で、次のように述べている。「教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・ 能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる」。
〇すなわち、「社会に開かれた教育課程」の理念を実現するための要件として、①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。 ②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。 ③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること、の3つが重要であるとする(文部科学省)。
〇ちなみに、今回の学習指導要領改訂に向けての中央教育審議会答申(2016年12月)は、「社会に開かれた教育課程」の実現について次のように述べている。
●(前略)新しい学習指導要領等においては、教育課程を通じて、 子供たちが変化の激しい社会を生きるために必要な資質・能力とは何かを明確にし、教科等を学ぶ本質的な意義を大切にしつつ、教科等横断的な視点も持って育成を目指して いくこと、社会とのつながりを重視しながら学校の特色づくりを図っていくこと、現実の社会との関わりの中で子供たち一人一人の豊かな学びを実現していくことが課題となっている。
● これらの課題を乗り越え、子供たちの日々の充実した生活を実現し、未来の創造を目指していくためには、学校が社会や世界と接点を持ちつつ、多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことのできる、開かれた環境となることが不可欠である。そして、学校が社会や地域とのつながりを意識し、社会の中の学校であるためには、学校教育の中核となる教育課程もまた社会とのつながりを大切にする必要がある。
●こうした社会とのつながりの中で学校教育を展開していくことは、我が国が社会的な課題を乗り越え、未来を切り拓ひらいていくための大きな原動力ともなる。特に、子供たち が、身近な地域を含めた社会とのつながりの中で学び、自らの人生や社会をよりよく変えていくことができるという実感を持つことは、困難を乗り越え、未来に向けて進む希望と力を与えることにつながるものである。
〇周知のように、1998年12月告示の学習指導要領に向けて1996年7月に答申された中央教育審議会第1次答申(「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」)で、「開かれた学校」が提示された。「社会に開かれた教育課程」は、その「開かれた学校」教育の延長線上にあるだけではない。学校・家庭・地域社会の連携にとどまらず、教育課程の目標やカリキュラム・マネジメント(学校が、教育目標の実現に向け、また子どもや地域の実態を踏まえて教育課程の編成・実施・評価・改善を計画的・組織的に進め、教育の質を高めること)のあり方にまで踏み込んでいる点が注目される。