学校教育・サービスラーニング・福祉教育―中央教育審議会答申等―

学校教育・サービスラーニング・福祉教育―中央教育審議会答申等―


学校教育・サービスラーニング・福祉教育

中央教育審議会
〇サービスラーニングは、教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサー ビス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラム。サービスラーニングの導入は、①専門教育を通して獲得した専門的な知識・技能の現実社会で実際に活用できる知識・技能への変化、②将来の職業について考える機会の付与、③自らの社会的役割を意識することによる、市民として必要な資質・能力の向上、などの効果が期待できる。
(中央教育審議会「用語集」『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』2012年8月、38ページ)

日本福祉大学
〇サービスラーニングとは、1980年からアメリカで始まった教育活動の一つであり、「社会活動を通して市民性を育む学習」です。具体的には、「見返りを求めない伝統的なボランティアの概念に基づくものの、しいて言えば『学習』を見返りとして、ボランティアサービスを提供する学生側とそれを受ける側とが対等の互酬関係に立ち、学生がボランティア活動の経験を授業内容に連結させ、学習効果を高めるとともに、責任ある社会人になる為に行うボランティア活動」といえます。
〇サービスラーニングでは、社会を見つめる基本的な力や課題について理解を深め、広い意味で仕事をするために必要なものの見方や判断力を身につけながら、市民性を育むことを目的としています。
〇サービスラーニングは、『学生が直接、自分自身で意味ある経験をすること』『その経験を教員の指導のもと熟考し、ふりかえり、分析すること』という二つの過程を結び付けた学習方法です。
〇サービスラーニングは、しばしばボランティア活動と混同されます。ボランティアは自発的な活動であり第三者の評価はありません。しかし、サービスラーニングは、あくまでも教育活動の一環であり、授業として評価を伴います。このように、大学教育としてカリキュラムに位置づけられた評価を伴う点が異なります。
(「日本福祉大学サービスラーニング」Webサイト)

筑波大学
〇サービスラーニングは、教室で学ばれた学問的な知識・技能を,地域社会の諸課題を解決するために組織された社会的活動に生かすことを通して,市民的責任や社会的役割を感じ取ってもらうことを目的とした教育方法、と定義されます。具体的な事例としては、教室でコンピュータ科学の知識・技能を身に付けた高校生・大学生が、小学生や高齢者にコンピュータの使い方を教えるという社会的活動を通して、地域社会で自分にできることを学び、市民としての責任を感じていく、といった教育実践を挙げることができます。
〇大切にされるべきは、教室で学んだ学問的な知識・技能を社会的活動の中で最大限に生かすこと、活動現場へ足を運ぶことを一度きりで終わりにせず何度も繰り返すこと、活動の中で見たこと・聞いたこと・感じたことをしっかりと振り返ることなどです。
(「筑波大学人間学群 サービスラーニング」Webサイト)

『新 福祉教育実践ハンドブック』
〇サービスラーニングは、「学習活動と社会貢献活動を意図的、計画的に結びつけ相乗効果を生むことにより、社会の主体としての市民を育むことを目的とした教育プログラム」といえます。
〇アメリカには、サービスラーニングを国家が推進する根拠となる法律「全国および地域サービス信託法1993」(National and Community Service Trust Act of 1993)があります。この法律においてサービスラーニングは、次のような4つの要件を備えたものと記述されています。
(a)児童・生徒や学生の社会貢献活動における教育的要素を高め、学校カリキュラム(教育課程)に組み込まれて行われる。
(b)初等、中等、高等教育機関と地域の連携によって行われる市民としての責任意識を育む取り組みである。
(c)地域ニーズに応じて綿密に組み立てられた社会貢献活動を通して、児童・生徒や学生たちの学習と発達を促す手法である。
(d)児童・生徒や学生たち、または参加者が、社会貢献活動をふりかえるための時間を組み込んだ取り組みである。
〇サービスラーニングを最も狭くとらえる場合、上記の4つの要件が同時に備えられていることが求められます。この場合、学校の取り組みとして行われる社会貢献活動であっても、課外活動として行われる取り組みは、サービスラーニングとはいわないことになります。
〇サービスラーニングを最も幅広くとらえる場合、上記の(d)の要件、ふりかえりを行っていればサービスラーニングといえます。
〇アメリカでは、「ボランティア」と「コミュニティサービス」という言葉を厳格に使い分けています。コミュニティサービスというのは地域貢献活動であり、サービスラーニングのなかで行われる教育活動そのもので、一定のノルマや枠組み、評価がともなう枠組みのなかで行うものです。
〇ボランティアとコミュニティサービスはしっかり使い分けることが大事です。サービスラーニングはコミュニティサービスをしっかりと使った授業であり、ボランティアを使ったものではないのです。
コミュニティサービスという意図的・計画的につくられた地域貢献の体験を使いながら授業をしていく。ここの違いをまず前提としてしっかり押さえることが大切です。
(上野谷加代子・原田正樹監修『新 福祉教育実践ハンドブック』全社協、2014年3月、114~121ページ)

 

(参照)
原田正樹/地域の課題に取り組む―サービスラーニングを理解する―/<原田正樹の福祉教育論>アーカイブ(2)講演録(1)/2021年3月2日/本文
上野谷加代子・原田正樹監修『新 福祉教育実践ハンドブック』全社協、2014年3月、114~121ページ。