障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印

障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印


障がい者差別の諸相―障がい者は「役に立たない」という烙印

(1) 障がい者は「役に立たない」という烙印
誰かに対して「役に立たない」という烙印を押すとき、そこには自分は何かの役に立っているという認識(ときに思い上がり)がある。誰かの役に立つことは、役に立たない人を見つけ、その人を見下すことにもなる。

(2) 障がい者は「遠慮すべきである」という暴力
障がい者に「遠慮すべきである」というとき、その人の命や人生に大きな影響を与えることにもなる。遠慮や謙遜は美徳であるといわれる。しかし、人に命や人生に関わる遠慮を強いるのは暴力である。

(3)「障害は個性」「みんなちがって、みんないい」という言葉
「障害は個性」「みんなちがって、みんないい」という言葉は、障がい者との共生をめざす文脈で語られる。しかし、この言葉は、障がい者と情感的に仲良くするための言葉であり、障がい者差別と闘う言葉ではない。

(4)「障がい者も同じ人間である」というフレーズ
「障がい者も同じ人間である」というフレーズは、障がい者(少数者)に、障害のない人(多数者)の考え方や価値観を押しつけたりする言葉ともなる。そのフレーズは、すべての人に認められている参加と平等の権利は、障がい者にも十全に認められなければならない、という意味内容で使われるべきである。

(5) 障がい者の「差別と区別は違う」という定型句
「差別と区別は違う」というのは、障がい者差別が起きたときにも出てくる定型句である。差別は不当にする・されるものであり、区別は不利益が生じないようにする・してもらうものである。不利益が生じる区別は差別であり、そもそも障害の有無や性別などの属性を理由に不利益を押しつけることは犯罪である。

 

(参照)
阪野 貢/言葉とフレーズと福祉教育 :福祉教育は障がい者から感動や勇気をもらい、自分を演じるための教育的営為か? ―荒井裕樹を読む―/<雑感>(144)/2021年9月19日/本文