「老爺心お節介情報」第81号
地域福祉研究者の皆様
社会福祉協議会の関係者の皆様
大変ご無沙汰しています。
「老爺心お節介情報」を送ります。
「その時の出逢いが」はも少し時間が掛かります。
出来次第送ります。
季節の変わり目、ご自愛ください。
2026年3月9日 大橋 謙策
初春や メジロ来りて 昼寝かな
紅梅が 咲きし小坪の 長閑さよ
兼喬作 2026年1月
〇ご無沙汰しています。前号を出してから大分時間が過ぎました。皆さんにはお変わりなくお過ごしでしょうか。
〇私の方は、1月中旬から2月一杯忙しい日々で、ゆっくりとパソコンに座って、「老爺心お節介情報」や「その時の出逢いが」を書いている時間もなければ、精神的に取り組もうとする意欲も湧いてきませんでした。
〇この間、我が家の庭は季節に対応して、日々姿を変えています。庭の畑の三浦大根と小株は収穫を迎えました。小坪の春蘭は赤紫の可愛らしい花を咲かせています。今は、赤の侘助や乙女ツバキが咲き、水仙が咲き、シデコブシが蕾を開き始めました。海棠も真っ赤な新芽を出し始めましたし、雪柳も白い花を咲かせ始めました。春はいいですね。
(2026年3月9日記)
Ⅰ 2月13日に、第2回能登半島地震支援中間報告会に参加しました
〇昨年5月に行われた第1回中間報告会は、主に社協関係の被災者支援と社会福祉専門職団体による支援の報告が中心でした。
〇第2回は、「能登半島地震の被災地で展開された社協と連繋した被災者支援――被災者支援のNGO・NPO活動から何を学ぶかー」がテーマでした。
〇全国災害ボランティア団体支援ネットワーク(JVOAD)代表で、かつ阪神・淡路大震災の際にボランティア活動を行い、その後結成された認定NPO法人レスキューストックヤードの代表でもある栗田暢之さん、アメリカに本部を持ち、世界的規模で貧困者等の支援を行っている国際NGOのADRA(日本支部は1985年設立)の小出一博さん、東日本大震災を契機に結成された公益社団法人ピースボート災害支援センターの大塩さやかさんにNGO、NPOの能登半島地震支援の状況を報告頂いた。
〇また、能登半島地震支援のNGO,NPOの活動を管掌した石川県生活環境部女性活躍・県民協働課の職員で、公益財団法人石川県県民ボランティアセンターの業務も兼任している石川県の職員である原拓矢さんと内閣府(防災担当)の防災教育・NPOボランティア連携担当の参事官補佐の澤邦之さんにも登壇して頂いた。
〇内閣府の澤さんには、災害救助法が2025年に改正され、「福祉サービスの提供」が医療や保健とともに位置づけられたこと、被災者支援に入る団体に、登録被災者援護協力団体制度を創設し、協力いただく場合には実費を弁償する制度ができたことなどを報告頂いた。
〇石川県の原さんは、被災者支援に入るボランティアの足の確保として輸送バスを3073台運行、キントーンを活用しての情報収集と関係機関との情報共有化、ボランティア活動に必要な資材の提供(ヘルメット、ブルーシート、防刃手袋、軽トラ)を提供した他、NPO法人に重機を貸与する便宜を図った。約9000万円の費用が支出された。
〇栗田さんは、まずJVOADが東日本大震災の教訓をもとに結成されたことを報告。東日本大震災では145の災害ボランティアセンターが設置され、約155万人のボランティアが参加。社会福祉協議会の災害ボランティアセンターとは別に、推計3000のNPO等が活動を展開。中央共同募金会の「ボランティアサポート募金」を活用したボランティアの総数は約525万人に上った。しかしながら、その相互の活動は必ずしも連携が取れてなかった。
〇その反省を踏まえて、「被災者のため、自発的かつ組織的に支援を行うNPO等の活動を支援し、行政・社会福祉協議会・NPO等のセクター間の連携を進め、課題解決のための被災者支援コーディネーションを行う」災害中間支援組織を設立したことを説明。
〇内閣府の澤さんが報告された登録被災者援護協力団体制度を推進するために、現在各都道府県に被災者支援コーディネーションを担う「災害中間支援組織」の設置を進めており、全国の28都道府県で設置されているという。
〇JVOADが把握した石川県に支援に入ったNGO/NPOは430団体であった。
〇認定NPO法人レスキューストックヤードとしては、他の団体と協働して12万食の食事を確保することが当初の最大の課題であった。
〇栗田さんの報告を聞いて、社会福祉協議会関係者が反省をするべきだと強く思った点は,各支援団体と協力し、JVOADがとりまとめた「被災高齢者等の見守りについて(在宅福祉サービス高齢者等の把握)」の調査活動である。
〇七尾市以北の5市町で行い、15000人の在宅福祉サービス高齢者の状況を把握し、「被災者の電子カルテ」として市町へ提供、情報共有したという。アウトリーチによるニーズキャッチが社会福祉協議会の使命だと言われている時に、全国のネットワークを持つ社会福祉協議会は何をしていたのだろうか。
〇栗田さんの報告で、公費解体作業が能登半島地震では大きな課題になったが、その解体物の廃棄の際の取組が大きな課題だと指摘された。確かに産業廃棄物の対象になるかどうか、廃棄物の分別等今後考えなければならない課題である。
〇栗田さんは、支援に入った石川県穴水町では行政、社会福祉協議会、NPO等との3者協議がもたれ、連携ができたが、“石川県社会福祉協議会とは、あまり意思疎通ができず、申し訳ない”と述べられていたのが印象的であった。
〇ADRAの小出一博さんは、穴水町に支援に入って活動をした。穴水町社協は、災害ボランティアセンターではなく、「災害ボランティア・ささえ愛センター」を設置した。
〇そのセンターでは技術系ボランティアと生活支援系ボランティアとに分け、技術系ボランティアはブルーシート張り、重機を使ってのものの取り出し、ブロック・灯篭くずし、倒木の処理等を担い、生活支援ボランティアは避難所運営、炊き出し・食事提供、移動支援、買い物支援、子ども支援、行政手続き支援等の活動を行った。穴水町社協が “「できない」、「NO」を言わない体制づくり” をしていたことを高く評価していた。
〇ピースボート災害支援センターは、「人こそが人を支援できる」をモットーに、世界34か国で活動しているNGOで、日本国内では2011年の東日本大震災を契機に設立され、88地域に拠点を置いて活動している。
〇2011年に結成されてから、国内外の災害支援に関わり、企業81社との協働による災害支援物資配布、避難所運営サポート250か所、食事・炊き出し支援162691食、災害ボランティアセンター運営サポート39か所、家屋清掃4620件で、共に活動したボランティアの人数は117788人に上る。
〇日常的な防災・減災の取組としては、防災・減災教育1410回(受講者数55999人)、災害ボランティアトレーニング修了者数9287人等を行っている。
〇平時には支援を必要としている人が食品・日用品を手に入れられるよう、「食」の「港」という意味のFOOBOUR(造語)というキッチンカ―を配備しており、災害時にはそのキッチンカーを被災地に派遣し、温かい食事を提供している。
〇能登半島地震対応では、2024年の地震で珠洲市への支援に入った経験があるので、珠洲市社会福祉協議会の神徳さんから2025年1月1日の発災直後に連絡が入り、キッチンカーで支援に入った。
〇珠洲市では、珠洲市社会福祉協議会が開設した災害ボランティアセンターとの連携と同時に、社会福祉協議会が運営している珠洲市ささえ愛センターとも協働し、コミュニティ支援として5か所で122回、困りごと相談・情報提供を行った。毎週実施のお茶会、とりわけ大谷地区では週1回73回のお茶会、来訪者は2000名を超えた。
〇珠洲市の支援で特徴的なのは、仏壇の撤去、石灯篭の撤去という他の被災地ではなかったニーズ、支援要請があったことである。浄土真宗の教えで、家の中に立派な仏壇があり、その撤去に苦労したという。
〇今回の第2回報告会を聞いてみて、JVOADに参加しているNGO/NPOの災害支援の組織的な取組、日常と連動された活動、重機使用や電気関係、大工の技術等技術系ボランティア活動の強力さを教えられた。
〇社会福祉協議会がコーディネート、組織化している、スコップなどでの泥水除去、がれき撤去、家屋内の整理等、それはやってはいけないとは言うつもりはないが、それはNGO/NPOに任せて、社会福祉協議会はもっと災害被災者支援のソーシャルケア(ソーシャルワーク・ケアワーク)に力を注ぐべきではないのかと改めて痛感した。
〇とりわけ、NGO/NPOの団体が在宅福祉サービス高齢者のニーズ調査で各家庭を訪問調査されていたことには、正直“社会福祉協議会は何をやっているのか”と思った。これこそ、社会福祉協議会が全国のネットワークを活かし、地元の方と同行訪問し、必要なら生活福祉資金の相談に乗ることをすべきではなかったのではないだろうか。
〇いずれにせよ、今回の第2回目の報告会で、筆者が社会福祉協議会のボランティアセンターの活動を見直すべきだと言い続けてきたことの必要性が改めて痛感させられた。
〇ただ、石川県穴水町、富山県氷見市で、いみじくも社会福祉協議会がボランティアセンターの開設ではなく、「ボランティア・ささえ愛センター」を開設し、がれき撤去、家屋内整理のボランティア活動の要請に対応して、それだけに対応するだけではすませず、その家庭のニーズ把握も一緒に行い、必要な支援につなげていたことが一抹の救いであり、今後の社会福祉協議会の災害被災者支援の展望を与えてくれたことがとても嬉しかった。
Ⅱ 超過疎、趙高齢少子化、人口減少地域の長野県木曽谷の「持続可能な地域福祉のあり方」を考える
〇長野県社会福祉協議会がここ数年取り組んでいる「人口2000人規模」以下の町村における「持続可能な地域福祉のあり方」に関する事業の一環として、筆者もここ数年長野県木曽谷を訪問している。
〇筆者が長年「バッテリー型研究」を行うのには、筆者は歳を取りすぎているが、「関係人口」の一人としてお手伝いができればと通っている。
〇長野県は、以前の「「老爺心お節介情報」でも紹介したが、人口の少ない町村が多い。木曽郡では、上松町3803人、南3607人、木曽町9758人、木祖町2422人、王滝村646人、大桑村3088人である。下伊那郡では、大鹿村914人、豊丘村6205人、喬木村5625人、泰阜村1386人、天龍村1000人、売木村497人、下条村3288人、根羽村793人、平谷村372人、阿智村5758人、阿南町3825人、高森町12467人、松川町12023人である。
〇このような地域は、人口減少が続き、団塊の世代が85歳を超える2040年時点において、果たして在宅での生活が可能になるような持続可能な地域福祉をどう展開できるのか、深刻な状況である。
〇厚生労働省の検討会が出した「2040年のサービス提供体制等のあり方に関する報告書」ではないが、木曽谷の社会福祉法人の連携化あるいは合併化、町村社会福祉協議会の一元化、更には福祉サービスに関わる、全国一律の要件を木曽谷に合わせて大胆に緩和しないとサービス供給を維持できないことは予想に難くない。
〇「みんなの木曽『X(かけはし)』プロジェクトが、2025年度の「休眠預金助成事業」に採択され、その事業のキックオフセミナーが「『協働』&『共創』で進める地域づくり かけはしフォーラム」として、2026年2月25日に木曽町文化交流センターで開催された。
〇事前に執ったアンケ―ト結果に基づくワールドカフェ的グループワークと関係者のパネルデスカッションが行われた。
〇この前夜祭では、王滝村等の木曽谷に移住してきて、様々な事業を展開している人が集まり、懇親会が行われた。移住してきた方々はそれなりの理念を持ち、かつ技術を有している方々で、これらの方々の新しい発想、理念と従来から住んでいる方々との、まさに『協働』と『共創』が展開されるならば、木曽谷の可能性は豊かにあると思えた。
〇その為にも、アンケート調査ではなく、各集落で住民座談会を丁寧に行い、木曽谷が今後どうあるべきかを検討する活動を展開して欲しいとお願いをした。と同時に、従来のように行政に依存する体質を変え、地域住民が「選択的土着民」として、「地域住民限定のNPO法人を設立し、住民の終末期支援、死後対応サービスまで含めた総合的な生活支援サービスを提供すること」を考えるべきだと提案した。その際には、高知県佐川町斗賀野地区の「とがの元気村」やNPO法人とがのの実践が参考になると紹介をした。佐川町の実践の他にも、徳島県美馬市NPO法人こやだいらや富山県氷見市のNPO法人八代等の実践も紹介をした。
〇ただ、木曽谷の町村は、介護保険は広域の組合が保険者で、個々の町村の状況を保険者として必ずしも反映できていないのではないかと感ずるところがある。介護保険の“横出しサービス”や“上乗せサービス”を保険者の判断でもっと考えてよいのではないかと思えるし、ここ数年の木曽谷でも行われてきたセミナーやシンポジュウムに行政の福祉担当職員の参加が少なく、社会福祉協議会が中心になって頑張るだけでは限界があるのではないかとも感じてきた。
〇そこで、以下の3点を今後の課題として取り組んで欲しい旨を現地のプロジェクトにも長野県社会福祉協議会にも申し入れをした。
➀ 行政の参加者が少なかったので、長野県木曽振興局とも相談し、かつ6町村社会福祉協議会会長連名で、6町村の町長、村長に、行政職員の研修をするよう申し入れをしたらどうか。
➁ 上松町の社会福祉法人社会福祉事業協会のみならず、郡内の特養などを経営している社会福祉法人の連絡協議会の組織化を考えたらどうか
➂ このプロジェクトを成功させるためにも、プロジェクトの関係メンバーと6町村の首長との連携のための懇親会をして、プロジェクトに対する関心と理解を深め、かつ協力・支援の要請をする必要があるのではないか――このことは、2040年問題及び介護保険サービスのあり方も考えて必要ではないかー
Ⅲ 本の紹介
➀『ヤングケアラーかもしれない あなたが楽になる カウンセリング・ブック』(田中悠美子著、中央法規、2026年3月)
〇この本の著者は、日本社会事業大学の社会福祉学部、大学院卒業生の教え子です。
〇田中悠美子さんは、一般社団法人ケアラーワークスの代表理事をしています。日本社会事業大学在学中から、東京都練馬区で「若年認知症ねりまの会MARINE」を立ち上げたり、2012年に若年認知症の親と向き合う子ども世代の「まりねっこ」を設立してきました。
〇田中さんは、介護福祉士、社会福祉士の国家資格を有しており、ソーシャルケアとケアワークとを有機化して考えるソーシャルケアラーの走りだと言えます。
〇この本は、府中市ヤングケアラープロジェクトとジョイントして、日本財団の助成を頂き実践してきたものを基に書かれています。
〇ヤングケアラーが直面している事例なども活用しながら、ヤングケアラーが自分を押し殺してまでケアをすることの心境からの解放や、負担しているお荷物(ケア)は分けたりすることができますとサービス利用のあり方が書かれています。
〇また、ヤングケアラーが自分探しを大切にして成長していく様を事例に基づき紹介し、自分探しの重要性を述べています。
〇この本は、ヤングケアラーに関わる多くの関係者に手に取って頂き、できるだけ多くのヤングケアラーに読んでもらえるよう推奨して欲しい本です。
〇ただ、著者には、この本はヤングケアラー向けの本だからこれでいいが、ヤングケアラーという事象がどこから生まれ、その解決をどうするかという世帯全体、家族全体へのアプローチが出来ていないことへの批判、著述がないのはやや問題だと指摘しました。
〇それにしても教え子の実践や論説が本となって世間に広まることは教師として教師冥利に尽きる喜びですね。
➁『ごちゃまぜで社会は変えられる』(濱野将行著、クリエイツかもがわ、2021年12月)
〇『月刊福祉』2025年10月号で、原田正樹先生が司会をされた座談会に登場していた濱野将行さんの『ごちゃまぜで社会は変えられる』(かもがわクリエート社、2021年刊)を読みました。
〇石川県白山市、金沢市、輪島市などで「ごちゃまぜ福祉」を実践されている社会福祉法人佛子園の理事長の雄谷良成さんや広島県福山市で有限会社として鞆の浦・さくらホーム等の経営、実践されている羽田冨美江さんと同じような発想でした。
〇従来の社会福祉は国が定めた制度に当てはまるかどうかという実践、思想に囚われて、住民のニーズを発見・把握し、それに応えるサービスを開発・提供していく考え方が出来ませんでした。この本は、従来の社会福祉の限界を乗り越えて、住民のニーズに応えることが如何に大事かを考えさせられる本です。これこそが、ソーシャルワークの醍醐味なのだと思いました。
(2026年3月9日記)
(備考)
「老爺心お節介情報」は、阪野貢先生のブログ(阪野貢、市民福祉教育研究所で検索)に第1号から収録されていますので、関心のある方は検索してください。この「老爺心お節介情報」はご自由にご活用頂いて結構です。
阪野貢先生のブログには、「大橋謙策の福祉教育論」というコーナーがあり、その「アーカイブ(1)著書」の中に、阪野貢先生が編集された「大橋謙策の電子書籍」があります。この書籍(大橋謙策研究第1巻~第10巻)は、ブログのフロントページ、右サイドバーの下段にも表示されています。




